読書感想:幼馴染は、にゃあと鳴いてスカートのなか

 

 さて、犬か猫か、と聞かれて猫と答える猫派の方は画面前にも何割かはおられる筈だ。実際私も猫好きである。何ならyoutubeの猫動画はよく見ている。みにら日記も猫ですけど何か? のほたて君も可愛いし、ぽこ太郎&うま次郎ももちまる君達も、レモンちゃんも好きである。ついでに言うといつか猫島と呼ばれるあの島へも行ってみたい、思いっきり猫をもふもふしたい次第である。そんな猫たちが話の根底に関わるのがこの作品なのだ。

 

 

 

日本で一番猫が多く住む町として有名な、宮毛町。この町には都市伝説的な一つの噂話があった。それは「この町に住む猫は時々、人を呪うことがある」というもの。そんな噂はしかし眉唾ものとして流され。この町の高校に通う、猫好きで料理もDIYも得意だけど父親が猫アレルギーなので飼えない少女、一歌(表紙左)。彼女には最近、悩みがある。それは転校の際に離ればなれとなる時に喧嘩別れし、帰ってきた事で級友となるも今も尚話しかけられぬ幼馴染、牧(表紙右)の存在。

 

「なんか突然生えた」

 

そんな彼女と、ひょんな事から同じ委員会となってしまい、活動開始その直後に起きる事件。それは牧がトラックに轢かれそうになっていた猫を助け、そのまま猫と共に消えてしまったと言うもの。程なくして、山の方の神社の方に何故かいた、と帰ってきた彼女が一歌だけに見せてきたのは、頭に生えていたネコミミ。 許可を取って触ってみて知るのはどうも本物、であるらしいと言う事。しかしそのネコミミは、割とすぐに消えてしまう。

 

「わたしのなかに、あの猫がいる」

 

不思議な事態もすぐ終わり、かと思いきや。いきなり牧が猫っぽい行動を始め、衝撃の事実が判明する。どうも助けた白猫と牧が一体化しているらしい、という事。一先ず白猫の方をマキと呼ぶことに決め。 猫っぽくなる際のパターンを分析しながら、一歌は何とかするために動き出す。

 

唯一秘密を知る、だからこそ。共に過ごし、共有する。その中で近づいていく、お互いの距離。またあの日の様に、と。 しかし、事態を打開するために訪れた神社の神主、おちゃめな女性の生水は語る。 同化が進むと引き離せなくなる、今ならまだ剥せる。だけどそれは白猫の方を殺す事、という事。 牧の事を選ぼうとする一歌、反発する牧。明かされるのは彼女が一歌を避けていた理由、ケンカ別れの根底の原因。

 

「もう二度と、離れたくない」

 

どんどん強くなっていく白猫、マキの意思は身体を乗っ取り姿を消して。いよいよ大ピンチ、どうすればいいのか。 また傷つけてしまうのか。一歌は涙と共に選ぶ、もう後悔しない道、全部取って見せる道を。

 

それは決して完ぺきではない、けれど綺麗な結末へと繋がる決意。それを引き寄せるのは、彼女を思う彼女の心。

 

「こっちこそ、待たせてごめん」

 

あの日も待たせてしまった、今も。でも今度は間に合った。ここに二人の絆は取り戻され、幼馴染としてまた始まっていくのだ。

 

何処かほのぼの、ゆるゆる。そんな中に幼馴染の絆が光っているこの作品。 心温めたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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