前巻感想はこちら↓
読書感想:この青春にはウラがある! - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で完璧超人である生徒会長、唯の秘密を知ってしまった事で生徒会の一員として引き入れられたこの作品の主人公、夏彦であるが。前巻を読まれた読者様、こうは思われないだろうか。唯やひよりといった、夏彦の周りの女子達は多かれ少なかれ「ウラ」を隠している訳であるが。そう考えると、裏表がない夏彦はある意味、異端、異質と言っていい存在ではないだろうか、と。
そう思われた読者の皆様、多分その感覚は間違っておられない。そもそも、よく考えれば物語開始前にひよりとくっついていてもおかしくない距離感である。ではそこに何があるのか。それが語られるのが今巻である。
「ウチらの学校の生徒会は何をやらされてるの・・・・・・」
夏休み、しかし生徒会に休みはない。二学期に行われる体育祭、その種目の選定と、競技に使う道具や競技の危険性についての洗い出しの為の予行演習がその仕事。当然、生徒会に任される分量の仕事ではないが、その分生徒会は権限も多い。そんな事を実感しながらも、まずは種目から協議し、更にはひよりにより魔性の女、ルミまで一時的なメンバーに巻き込まれ。唯のぽんこつを隠すために四苦八苦したり、夏彦がケガをしたり。 皆でお出かけ、更には深夜の学校といったイベントもある中。何とかつつがなく準備は進み、体育祭本番の時はあっという間にやってくる。
「あたしの正面からの告白を受けて、オーケーしない男子なんていねぇだろ」
そんな中、夏彦を狙い動き出すのはルミ。本気になってしまったからこそ、絶対に手に入れる、と。ひよりに喧嘩を売って宣戦布告し、まるで暴走機関車の様にあふれ出る自己肯定感そのままに。体育祭でのジンクスも利用し、彼の心に自分を刻み付けるべく、行動を起こそうとする。
「それこそが、あいつの恐ろしさよ」
だが、ひよりの先輩の恋路を応援すべく本番では駆け回っていた夏彦の、心は彼女の告白では何も動かなかった。それは何故なのか。
それこそが、夏彦という一見すればどこにでもいる、平凡な男子の抱えたウラ。
特別なんてない、全て平等ないち。だからこそ、特別なんて彼の中には何処にもない。それは、ある意味無慈悲で残酷な平等主義。誰もと隔絶する、線を引くもの。
しかし、ルミは逆に燃え上がり、改めて闘志を燃やし。ひよりとのヒロインレースの舞台に立つのである。
自分の目標を見つけつつある彼。ひよりが逃げ切りつつ差し切るのか。それとも、ルミが追い込みで掻っ攫っていくのか。はたまた、ダークホースが一気に抜き去っていくのか。
色々な事が本格的に始まる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。