読書感想:ハズレギフト「下限突破」で俺はゼロ以下のステータスで最強を目指す ~弟が授かった「上限突破」より俺のギフトの方がどう考えてもヤバすぎる件~

 

 さて、時にゲームにおいては「バグ」、という開発も想定していない不具合があると言うのは画面の前の読者の皆様もご存じだろう。勿論開発段階でデバック、というのは行われているが取り除き切れぬバグ、というのは存在する訳でありだからこそゲーム発売後にアップデートファイルにてバグに対応していく訳であるが。時にバグ、というのはプレイヤーによりゲームを遊ぶ上で便利に利用される事もある、というのも画面の前の読者の皆様はご存じかもしれない。

 

 

そんなバグ的挙動を利用して強くなっていくのがこの作品なのである。

 

ゲーム的な数値の概念が存在する、所謂ファンタジー系の世界観なとある異世界。 この世界にある王国、その片隅にある貴族の領地。その貴族令息であるゼオン(表紙右)は、双子の弟であるシオンと共にスキル鑑定の儀式を受けたら、シオンには「上限突破」という勇者にもなる事が出来るスキルがあったものの、ゼオンには「下限突破」、という文字通り下限を突破するという訳の分からぬスキルであり。父親とシオンに侮蔑の視線を向けられ、実家から追放されてしまう。

 

「これ・・・・・・とんでもないぶっ壊れギフトなんじゃないか?」

 

しかしあまり悲観する事もなく、冒険者になる事を決め。 領主の名代として関わりのあった受付嬢、ミラベルに爆裂石という強力なアイテムを特別に貰い。初めての依頼で薬草を取りに向かったら、ゴブリンの巣穴に落ちてしまって。脱出を目指す中、ひょんな事から判明する。実はこの「下限突破」のスキル、とんでもなさそうだ、と。

 

ゼロより下、それはマイナス。普通ならカウントはしない、だけど何故かカウントされてしまって、爆裂石が無限に出てくる。 つまりはバグ技的ギフトだったのだ。 色々強くなろうと試行錯誤しながら攻略する中、ダンジョンの奥で遭遇したのはボスのゴブリンと中々見かけぬ種族の魔族、そして籠に囚われた伝説の存在、妖精のレミィ(表紙左)。 遊戯者、NPCという言葉に首を傾げる間もなく、ボスゴブリンに食われかけていたレミィを助けるために介入し。極限まで切り詰めた詠唱による魔術連射というごり押しで魔族を倒し、レミィの協力でボスゴブリンも討伐し。レミィも仲間になり、ゼオン冒険者として踏み出していく。

 

錬金術師のシャノンから錬金術を学んだり、強者な冒険者達にも見込まれたり。順調なゼオンの裏、シオンは兄に負けじと焦りのままに強くなろうとするも空回り。そんな焦りを新たな魔族に利用され。「上限突破」を悪用されて、スタンピードを起こす元凶になってしまう。

 

幾多の魔物迫る中、冒険者やギルドを上手く動かし。貴族の兵たちも巻き込んで、とんでもない強さを持つ魔物とタイマンで向き合って。人質にされていたシオンにも協力させ、レミィのサポートも合わせて。何とか勝利をもぎ取って見せて。

 

「俺はどうも困ってる人を助けるのが好きらしい」

 

その先に、本当の意味で自由になり。見果てぬ世界へと飛び出していくのである。

 

裏技的なスキルで無双する、王道さの中に爽やかさのあるこの作品。心が厚くなるファンタジーを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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