前巻感想はこちら↓
読書感想:ドスケベ催眠術師の子 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻でドスケベ催眠術というものの本質に向き合いそれぞれかけられていた催眠を解いた沙慈と真友であるが。そも、ドスケベ催眠術というのは正義なのか悪なのか。それに関しては前巻を読まれていれば使い方次第、と考えられている読者様も多いであろう。しかし字面だけ見て、他人の印象から見ればドスケベ催眠術というのはどう見ても悪、と言えるかもしれない。今巻ではその辺りにも向き合いつつ、日常にドスケベ催眠術の絡むミステリが巻き起こる巻なのである。
「前職で取引先だったんだ。だから挨拶も兼ねて、ね」
まひるが原因でドスケベ催眠術師という悪評の危険性が全校生徒に知れ渡り、故に真友が危険視され、つるんでいる沙慈も心配されたり。しかしお互いそこまで気にしない中、カウンセラーとしてやってきたのは、沙慈の年上幼馴染であり初恋の人、そして合理主義を教えた相手である水連(表紙)。 実は真友の活動のサポーターでもあった彼女と旧交を温め。生徒会からお願いされ沙慈が、勉強だけが壊滅的な元級友、未代の勉強の面倒を見ることになり、真友と過ごす時間が減ったり。そんな時、いきなり問題が巻き起こる。
「これはびしょ濡れ衣」
生徒会副会長、四季丸が突然パンツ一丁になり練り歩くという奇行を起こし、そこにあるのはドスケベ催眠術の影、当然真友が疑われるが勿論それはない。生徒会長である六法に依頼され事件解決に乗り出す事となる中、今度は類が聞いた言葉全てをドスケベに解釈する、という事件が起き。 事件の全貌は見えだす。
使われているのは、ドスケベ催眠術の中でもかなり古く汎用性がない故に四十八手からは外れた術。何故そんな事になっているのか、それはとあるアプリを見たから。事件の全貌が少しずつ見えてくる中、いきなり未代が犯人として自首し。彼女が悪役となり、事件は解決、したかに見えた。
だが、沙慈にはどうも気にかかる。未代にアプリを制作する頭脳はない。ならば、誰かが犯人に仕立てた? だとしたらどうやって? まひるに依頼した、アプリ解析の結果と微かな違和感から引き出した真実は、真犯人はすぐ側にいたと言う事。
「今度こそ、君の世界からドスケベ催眠術師を排除するために」
その理由、それは植え付けられて、だけど真っ直ぐに固定された愛の為。彼の事を思うからこそ、自分なりのやり方で彼の事をしがらみから解放しようとしたのだ。
「なら―――、どうにかしよう」
だけどそれは、合理的ではあっても。過去の自分に重なってしまう未代の事を放置しておくことは出来ないから。合理的、を一歩超え。その先にドスケベ催眠術も生かして。黒幕の事も肯定する一手を打ってみせるのである。
前巻よりも温かみの増している今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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