読書感想:ここでは猫の言葉で話せ4

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:ここでは猫の言葉で話せ3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で登場したアーニャの身体を蝕む毒、の完治の鍵を握る少女、凛音。小花にバレてしまったアーニャの過去。全てに決着をつける時、がすぐそばまで来ていると言うのは画面の前の読者の皆様ももうご存じであろう。全員で生き延びなければ、誰一人として欠ける事無く。全員で幸せへと辿り着くためには、勝ち残らねばならぬ決戦がある。いよいよそれが訪れるのが今巻なのである。

 

 

「・・・・・・困った。どれを着ていけばいいのだろう」

 

と、その前に語られるのは決戦前の小康状態、穏やかな一時。小花への言葉に出来ぬ思い、読者からすればお察しな恋の感情が育ち始めたアーニャが、初めての恋にぎこちなくなったり。文化祭、クラスの出し物である猫メイドカフェと、演劇部の助っ人として出演した自身をイメージした演劇に出たり。

 

「だって―――わたしが好きになったのは、目の前にいる今のアーニャだもん」

 

「それまでずっと、わたしのそばにいて?」

 

穏やかな時間の中、イメージの中の自分と今の自分の乖離、に気付き。今までの生き方の代償として夢を持てぬ、だからいつか夢を持てるようになりたいというアーニャを、小花は自分の夢を明かしたうえで、彼女が夢を持てるようになるまで、と真っ直ぐに想いを告げて。一つ、二人の関係は新たな段階へと進む。

 

「お久しぶりっす~。アーニャ先輩♪」

 

夢を語る季節、優しい時間はもう終わった。なれば次は、厳しくて冷たい、残酷な現実の時間。 消し去れず逃れられない過去は、遂にアーニャの元へ。彼女を慕う後輩であり、組織最強の殺し屋、ラードゥガがアーニャの元へ辿り着き。更に別口の殺し屋がシュエに依頼し、別口の双子暗殺者を差し向けて来て。否応なく決戦が巻き起こり、アーニャと凛音それぞれが命の危機にさらされる。

 

アーニャを守ろうとするエニュオーとペルシスが、ラードゥガの奥の手に容赦なく叩き潰され。怒りに震えるアーニャが、猫から学んだ奥義で食い下がり、ラードゥガの優しさで生かされて。

 

凛音を狙う殺し屋、その戦いで身近にいた裏切り者にシュエが傷つけられ、明良がくたばり。凛音が決意し、アーニャへと免疫細胞が提供され。事態は一応、解決を迎える。

 

「だったら、お互いにもう少しちゃんと考えてみねえか? 人生ってやつをよ」

 

 

「じゃあ、いこうかあ」

 

「うむ、いこう」

 

そして全てが終わって。実は生きていた明良の元にシュエが追いついて。 旭姫と別れ、小花と共にアーニャは新しい日々、もう雪は見えぬ穏やかな春の日へと歩き出していく。皆が皆、それぞれの幸せに歩き出していくのだ。

 

まさに万感、大団円。最後まで皆様も是非見届けて欲しい。

 

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