読書感想:現代転移の第二王子

 

 さて、この作品の大元、「転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます」シリーズは春アニメとして今期アニメ化されている訳であるが、画面の前の読者の皆様はアニメをご覧になられているだろうか。面白いと思われるかは各人の感性次第なので何も言えない訳であるが。この作品は上記シリーズのスピンオフ、ロイドたちが現代世界に転移してしまって始まるお話なのである。

 

 

 

そしてこの作品の主人公は、ロイドではなく第二王子、アルベルトなのである。何故ロイドではないのか、と思った方もおられるかもしれない。しかしロイドの性格を考えてみて欲しい。魔術バカで魔術の研究以外はどうでもいいタイプの馬鹿である。そう考えると、彼の方が現代転移するなら主人公に相応しいのである。

 

「ま、いくらなんでもそんなはずがないよな」

 

執務室にロイドといたら突然巻き起こった魔力の奔流。何とかロイドだけでも守ろうとして次の瞬間、いたのは日本の路地裏。ロイドが何かやらかしたかと一瞬邪推するもそれはないかと思い直し。一先ずどうしたものか、と思案した所に声をかけてきたのはナツメ(表紙左上)という少女。彼女に拾われ、一先ず彼女の家にお邪魔する事となる。

 

「僕は器用ですから」

 

そして、アルベルトは本編ではあまり目立たぬも、きちんとスペックを見てみれば超優秀。特に国の顔役でもある、故に多芸。 記憶の中にある数十の言語パターンから類似のものを探す事で、短期間で日本語を習得し、料理もあっという間にコツを掴み。ナツメの叔父が店長をする本屋に紹介され、叔父の好みを把握しその好みについて語れるようにしたことで気に入られ。社員寮も借りることが出来て。さっくり業務を把握し、万引き犯もこっそりしばき倒し。あっという間にこの世界での生活の基盤を築いていく。

 

時に特売に大苦戦したり、時に何故かラーメン店の店主と張り合ったり。何故かこちらの世界に来ていたアリーゼと再会したり。

 

「ただ為すべきことを成す、それだけの話です」

 

そして、小説家になりたいと願うも尻込みするナツメの背を押したり。時にはパワースポットにいた狐の妖怪を退治してみたり。異世界にいた時よりもドタバタ、かもしれぬ。けれどこの生活をいつの間にか、手放すことが悲しくなっていて。それでも元の世界に戻る為に頑張ろうとするのである。 ・・・・・・身近に全ての元凶がいるとは気づかずに。

 

原作にも増してドタバタ、だけどほのぼのなお話が楽しめる今作品。原作ファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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