読書感想:血眼回収紀行

 

 さて、バロールという魔神は魔眼で有名ではあるが、魔眼という要素は時々ファンタジー題材の作品で出てくるものであろう。目に様々な効果が有り、時に切り札となりうるそれ。そして義眼と言えば、という問いかけに千年眼という答えをあげる私は割と決闘者な訳であるが。そもそもあれって義眼というカテゴライズで良いのだろうか?

 

 

そんな義眼と言うと、例えばロボットアニメであれば機械式の義眼というのもある訳だが、現実そんな義眼はまだ出来てない訳であり。そしてこの作品は、ファンタジー世界でそんな義眼を探し求めるお話なのである。

 

「俺たちはただ探し物をしているだけで、あんたらの縄張りにもシノギにも興味はねぇ」

 

元軍人、しかし除隊してから様々な仕事を渡り歩き、現在はとある少女の護衛である青年、ヴィンセント(表紙左)。彼が用心棒として警護するのは、両義眼であり義眼作りの職人、イルミナ(表紙右)。彼女が追い求めているのは、天才義眼師であり自らの育ての親、先代の「イルミナ」の元から持ち出された「天窓の八義眼」と呼ばれる魔法の義眼。それぞれ別の観点を重視して作られたそれは、使用者に超常の力を齎すものの、悪意や狂気を暴走させてしまう「毒」な一面を持っており。誰かに迷惑をかける前に、と回収の旅を続ける。

 

その旅の途中、とある街で悪ガキに大切な武器、魔法使いとしての命である短杖をスラれ、取り返そうと悪ガキを追い詰めれば、その先の指示役を追い詰めればそこで見つけたのは、「八義眼」らしき影。そこにヴィンセントが感じたのは自身が追い求める者、裏切った元相棒。二つの影を追い、街から街へと移動を始める中。行く先々で魔法の義眼が絡む事件に遭遇し、その全てが繋がっていく。

 

元軍人たちの仕掛ける詐欺、何故か家族の餓死に気付かぬ家族達。ヴィンセントを追いかけ田舎から出てきた幼馴染、エレクトラも巻き込まれ。スパイに協力を仰ぎ、「鳩」と呼ばれる連絡役の尻尾を追いかけて。その先、辿り着くのは電波塔を通し広がろうとしていた八義眼の毒、そしてテロ事件の影。 

 

「てめえのやり方が気に食わねえ。だから、計画を滅茶苦茶にしてやる」

 

その思惑に立ち向かう理由は何処にあるのか、簡単である、気に食わない、理由はそれだけでいい。それぞれの場所で力を尽くし、時にハッタリと奇策も用いて。命がけの戦いに突っ込んでいくのである。

 

猟奇的なミステリと、真っ直ぐな王道ファンタジーが絡み合って、かなり見ごたえのある面白さを持っているこの作品。 少し違ってだけど真っ直ぐなファンタジーを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 血眼回収紀行 (ファンタジア文庫) : かれい, 可笑林: 本