読書感想:少女星間漂流記

 

 さて、突然ではあるが銀河鉄道999という名作アニメを画面の前の読者の皆様はご存じであろうか。機械の身体を得る為に、主人公が謎の美女に導かれて、銀河の星から星へと旅をするというのが趣旨である。宇宙戦艦ヤマトも、戦いから戦いばかりという物騒さではあるものの、まぁ星から星へ、イスカンダルと言う最終目的地を目指して旅をする、という趣旨と言えなくもないかもしれない。それはともかく。旅をする、というのは良いものである。旅先のまだ見た事無い、正しく未知の世界に憧れると言う心理も分からなくはない。

 

 

さて、という前置きから察していただけたかと思うが、この作品は旅を題材としたロードノベルである。しかしこの作品は、前述したアニメ二作品との共通点を持っている。それが何かと言うと、地球が荒廃して滅亡している、という事である。

 

「次こそ住める星だといいな」

 

環境が荒廃し、人が住めなくなった地球。そこに住んでいた地球人はそれぞれ安息の地を求め、銀河中に散り散りとなり。そんな数少ない生き残りの地球人の中、馬車を模した奇妙な宇宙船で銀河を当てもなく旅している二人がいた。知的欲求第一の若き天才科学者、リドリー(表紙右)と内気ながらも戦闘能力高く、護衛を務める少女、ワタリ(表紙左)。様々な星を巡る中、移住先を探して。2人を待っているのは、それこそ生態系から文化まで何もかもが異なっている、様々な星たち。

 

死者の蘇生すら可能とする神がいる星、運が良い者が上に立てる星。愛が溢れてはいるけれど、刹那的な愛しかない星。人の心を食らう食虫植物が支配している星。大量の本が集められた図書館がある星、超常的存在である魔王がいる星。

 

様々な星を巡り、現地の生物の営みを目撃したり、時に争いとなったり。更に同じ地球人と出会って、愚かで醜い部分を垣間見たり。

 

 

何れの星にも、それぞれの世界があった。そこには何かが生きて、営みがあった。時に復讐のような黒い思いが廻って、時に確かにそこに愛があって。誰もが懸命に、みんなそれぞれ生きていた。

 

「二人で始めた旅だもの。終わる時も二人だよ」

 

「一緒に住める星を探そう」

 

だけど、何処の世界であっても、住むには適さなかった。ワタリだけなら住める星もあった、だけどそれは選ばなかった。何故ならば、終わる時は二人だから。最後まで二人、生きる場所を探すと言う事は死に場所を探すと言う事。だからこそこの旅は、まだ終われない。だからまだ、旅は何処までも続いていくのだ。

 

染み入るような独特な慕情と、少女二人の愛めいた繋がりがあるこの作品。心に残る、かもしれぬ旅物語を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。