読書感想:魔神に選ばれし村人ちゃん、都会の勇者を超越する

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「親友」であり「好敵手」。そういう関係は、きっと何よりも熱く眩しい関係。画面の前の読者の皆様はどう思われるであろうか。もしそんな関係の二人が女の子同士だったらどうなるのか。その答えはすべてこの作品の中に存在している。

 

さて、突然ではあるがここで画面の前の読者の皆様、貴方方に一つ問いを投げかけたい。この作品の作者である年中麦茶太郎先生と言えば、貴方方は何の作品を連想されるだろうか。その中に、マホテキこと、剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?シリーズを連想される方はどれほどおられるだろうか。

 

かのシリーズのファンの読者の皆様、どうか安心してほしい。この新シリーズは、正しくマホテキの系譜を継ぐ作品であり、原点回帰と言っても過言ではない作品なのである。

 

いつからあるのかも分からぬ「ダンジョン」。かの迷宮を探索し富を得る「探索者」。神から与えられ人間に超常的な力を齎す「加護」。

 

 そういうモノがあるとある異世界の片隅。王都へ向かい、一人の少女が旅立った。彼女の名はリリィ(表紙)。伝説の女剣士ブレンダに生まれた直後にダンジョンで保護され、「魔神の加護」という誰も知らぬ加護によりとんでもないパワーを秘めた、末恐ろしい女の子である。

 

ブレンダの死により天涯孤独、頼れるのはブレンダの知り合いであると言う女性のみ。だが、お上りさんなリリィは王都に到着して早々、ダンジョンへと入ってしまい一週間も彷徨う事になり。

 

かのダンジョンの中、リリィは運命的に一人の少女と出会う。その名はノエル。四歳年上の女の子であり、聖剣の使い手である女の子である。

 

 かの出会いから、リリィの王都での生活は本格的に始まる。だが、始まったのはそれだけではない。ノエルにとっての未知の体験も、同時に始まったのである。

 

「お願い・・・・・・置いて行かないで・・・・・・」

 

自分にあるのは加護と鍛錬が齎した強さ。けれど、リリィは容易く、その天才性で以て上を往く。導いていこうと思った。けれど彼女はいとも容易く、何も気づかぬうちに自分を追い抜いて行った。

 

初めての挫折、初めての嫉妬。だけど、負けたままでは終われない。堂々と向き合える自分になりたい。

 

なればどうするか。答えは簡単。また戦おう。彼女の知らぬ強さを胸に、今度こそ彼女に勝つために全力で。

 

「分かりました。戦いましょう!」

 

「ありがとう、リリィ。全力で征くわ」

 

恨みも呪いも越え、純然にただ、貴方に勝ちたい。だからこそ、お互いがお互いしか見えなくなるほどに全力で、真っ直ぐに。

 

弾けるほどに全力で、幼き故に真っ直ぐだからこそ熱く。正に子供特有の全力の熱さが溢れている。だからこそ、この作品は面白く、一種の感動を伴って楽しめるのである。

 

年中麦茶太郎先生のファンの読者の皆様。カワイイ女の子達の戦いが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

魔神に選ばれし村人ちゃん、都会の勇者を超越する (GA文庫) | 年中麦茶太郎, shnva |本 | 通販 | Amazon