読書感想:無防備かわいいパジャマ姿の美少女と部屋で二人きり1

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は寝る時はどんな格好をされているだろうか。何かパジャマを着ているか、パジャマ代わりにジャージかスウェットでも着られているか、それともなにも着ずに寝るタイプであろうか。その話はともかく。休日は着替えるのが面倒くさいから寝巻のまま過ごす、という読者様も画面の前にはおられるかもしれない。

 

 

この作品もまた、そんなパジャマ姿で一日過ごしている登場人物がいる。それこそがヒロインであるこいろ(表紙)だ。彼女と主人公である学道が出会う事からこの作品は幕を開けるのである。

 

「このミッションは、きっとあなたのためにもなる」

 

勉強は好きではないけれど、勉強に生きて、趣味らしい趣味も持たず。代わりに成績優秀、そんな彼が一度だけ起こしたヒューマンエラー、それは名前の書き忘れで0点という誰かがやったかもしれない事。その科目が担任の先生であった事で、見逃してはもらえたものの、借りを作ることになってしまい。その引き換えに、塾の夏期講習の帰りに引きこもりのクラスメートにプリントを届けて欲しい、という依頼を受ける。

 

一先ずの邂逅、翌日の邂逅でパジャマ姿の彼女に別にそれでもいいじゃないか、と言ってみたら感動されて。家の中に招かれてみたのは、彼女が補習をサボってめちゃくちゃ夏休みをエンジョイしていた、という事。しかし彼女から、実は学校がつまらないと思っている事を見抜かれて、一つの提案をされる。

 

―――一緒に堕落しよ?

 

それは堕落へのいざない。ぐーたらというのがどういうものか学ぶ為、彼女を師匠として、その家に通う事になって。一緒にゲームをしたり、パジャマだけは豊富な彼女のファッションショーを観賞する事になったり。気が付けば何故か、泊まったりといったイベントも起きたり。自分とは正反対の、ぐーたらさ。だけどそれをひたむきに、真っ直ぐにエンジョイしている彼女。いわばアクティブな引きこもりな彼女と関わるうち、彼女の抱える事情の一端に期せずして触れてしまい。 ちょっとすれ違った後、学道は初めて自分の意思で学習をする、という行為を放棄して、彼女の隣にいることを選ぶ。

 

彼女が明かすのは、かつてスポットライトの下で幾人も魅了しながら、自分を見失って引きこもったという昔話。学道が明かすのは、母親に強制された生き方が指針となり過ぎて、自分の好きなものも何も持ってこなかった、空っぽな自分のお話。

 

「ならさ、何も悩まなくても、ずっと一緒にいればいいんだよ」

 

だけど二人なら、何かが変われる。二人でなら自然でいられる。なら、色々考える必要も難しく悩む必要もない。ずっと一緒にいたい、その思いは確かにそこに在るのだから。

 

ほのぼのとした日々の中、確かな温もりが優しいこの作品。仄かに甘い作品を読んでみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。