読書感想:人類すべて俺の敵

 

 さて、どこかで、国民全体からランダムに選ばれた一人が一年間国民全体から無視されると言う漫画の広告を見た気がするがさて、なんていうタイトルだったのだろうか。それはともかく。もし画面の前の読者の皆様は、世界中の人々が敵になってしまったとしたら。それでも戦い抜く事を選ばれるであろうか。

 

 

というのはともかく、まずはこの作品の公式サイトを見られた読者様はこう思われたかもしれない。公式サイトで公開されているこの神様、全ての元凶じゃね? と。実際こういうキャラって大抵中身がロクでもなかったりするのだが。この作品における神様は、まぁ一応は神様であり、中立であり。大枠的に見れば、まぁいい方の神様、と言えるかもしれない。そのやり方は人間基準だととんでもなく過激で迷惑なのだが。

 

 

一カ月くらい前のある日人類を唐突に襲うようになった異常事態、老若男女、人種問わずある日急に意識を失い、そのまま眠りから起きてこないという現象。「魂魄剥離」と呼ばれるその現象が世の中を賑わすある日。 父親が殺人犯であり、幼馴染みの朔夜の母親が被害者、そして親友の辰貴の父親、警察官に父親が射殺されたと言う過去を持つ少年、憂人(表紙右)。学校の帰り道、彼が遭遇したのは謎の幼い少女が、炎を放つガラの悪そうな男に殺されかかっている、というとんでもない現場。

 

「一緒に来るか?」

 

縋りつくような目で見てくる彼女を見た瞬間、浮かんだのは守りたいと言う思い。その思いで手を取った時、体の中に溢れたのは言い知れぬ力。男を撃退しひとまずその場を離れ。朔夜の元に向かった後、彼女の名前はレーヴェ(表紙左)であると聞き出す。

 

「さあ、人類諸君。≪聖戦≫の始まりだ!」

 

だがその日の内、事態は動き出す。突如人類が集められた謎の空間、そこに降臨した神と名乗る存在は、自身の配下である十人の天使を紹介、魂魄剥離を起こしている魔王、レーヴェを紹介する。最早留まる場所は無し、朔夜に別れを告げ当てもなく飛び出して。息抜きに訪れた動物園で天使の一人と遭遇し、殺すことになってしまったり。

 

「だけど、それらすべてが延いては人類のためになることだ」

 

初めての殺しの夜、憂人の元に姿を見せた神。かの存在が語るのは、聖戦の真実。そもそもこれは、遠からず自滅で滅びる人類を救うため、間引きの為という事であり。 誰にも愛されなかったレーヴェを、愛されると言う願いと引き換えに魔王にし。 機を見てこの真実を明かす用意はしている、という事。

 

さて、憂人が抱え込んでしまったのはそういう事だ。魔王を殺して何億人もの人類を救うか、それともレーヴェを守って、人類を殺すか。正に世界か一人か、問われているようなもの。その問いかけに答えを出す事も出来ず、しかし進み続けるしかない。

 

「これから先、どうかお気をつけて」

 

だけど、行動の先に助けられたものもあって。それでも神様が企画し用意したこの舞台の趣旨は変わらない。世界か彼女か。そしてその茨の道を進み続けるのなら、きっと彼等を待っているのは悲しい戦いだ。

 

神の定めた舞台の上で様々な感情が交錯し、心を切り裂いてくるこの作品。心に突き刺さるような作品を読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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