読書感想:放課後、ファミレスで、クラスのあの子と。

 

 さて、デニーズにガスト、サイゼリヤすかいらーく。この世の中には様々なファミレスが存在している訳であるが、画面の前の読者の皆様の好きなファミレスはなんであろうか。私はデニーズ派である。それはさておき。ファミレスを舞台にしたアニメも存在するように、ファミレスと言うのは時に様々なものの舞台となり、そこに来店する人それぞれに人生があるのである。

 

 

さてそんな訳で、この作品は主にファミレスを舞台に展開される作品な訳であるが。放課後、何故主人公達はファミレスに集うのか。そこには色々な理由があるのである。

 

バイト後は自宅への帰り道の途中にあるファミレスに立ち寄って、夜十時ごろまで時間を潰すのが日課な少年、紅太。何故彼は、いくら高校生とは言え出歩いていると警察に目を付けられてもおかしくはない時間まで外にいるのか。それは、新しく出来た家族と気まずいから。実の父親からは出来損ないと蔑まれ、再婚で出来た義妹、琴水が完璧超人であった為に、母親からは無言の気遣いを受け。新しい父と義妹は友好的であったものの、何となく家にいずらくて。だからこのファミレスが逃避先であったのだ。

 

「うん。いいな。俺たちのスタンスにも合ってるし」

 

「そっか。じゃあ、決まりだね」

 

そんなある日、遠目から見るだけだった、いつも同じ時間に同じ店にいる級友、小白(表紙)に電話の内容を聞かれた事で話しかけられ。紅太は彼女の事情、大人気の歌手の姉のマネージャーを務める母親に何も期待されぬが故に家にいづらいという事情を知り。同じ席でただ、お互いの愚痴を聞き合うだけ、という同盟関係を締結する事となる。

 

ただ、有名な姉に自分を通して迫りたいだけ、という周囲に辟易していた彼女の愚痴を聞く事となったり、代わりに自分が熱中しているものを教えたら、小白が熱中しすぎてファミレスで寝落ちするような事となったり。 少しずつ彼女との時間は、落ち着いた特別なものになっていって。お互い人には言えぬ、理解してもらえぬだろう悩みを共有する事で。 時に普通の学生らしいこともする関係が、いつのまにか大切な落ち着く場所、互いの居場所になっていく。

 

そんな時間を続ける中、少しずつ紅太は家族と向き合う事が出来るようになっていく。その裏で。やっぱり母親と向き合えぬ小白は、一方的に押し付けてくる母親と対立を深めていく。

 

「それでも・・・・・・お前と笑って過ごせるなら、何でもやってやる」

 

そんな彼女の居場所となる事こそ、今の紅太がやるべき事。例え世界の誰が味方しなくても、自分だけは味方である、という事。それこそが花丸な答え。心揺れる小白を今度は紅太が受け止めて。一緒に過ごす時間を増やしていこうとするのだ。

 

だけどすぐ、試練の時はやってくる。その季節は夏休み、それはもうすぐそばに。

 

独得な距離感と温かさのある甘さが心に安らぎを齎してくれるこの作品。心温まるラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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