読書感想:絶対魔剣の双戦舞曲2 ~暗殺貴族が奴隷令嬢を育成したら、魔術殺しの究極魔剣士に育ってしまったんだが~

 

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読書感想:絶対魔剣の双戦舞曲1 ~暗殺貴族が奴隷令嬢を育成したら、魔術殺しの究極魔剣士に育ってしまったんだが~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この巻の感想を書いていく前に画面の前の読者の皆様は、作者であられる榊一郎先生の作風、というのはご存じであろうか。その答えは、白、と黒、と言われるように。ある時は世界は優しいものの、ある時は世界は厳しく容赦が無かったりするのである。ではこの作品はどちらか。それを言うなれば黒、となるのであろう。その容赦のなさが牙を剥いてくるのが今巻なのである。

 

 

前巻の騒動からはやくも半年。ジンを英雄として扱う者の方が多いけれど彼を疎む者がいるのもまた確かであり、その結果として悪い噂を流され。リネットやルーシャを始め六人の生徒を育成しながらも、ジンはまだ結果を出すには至っていなかった。

 

 そんな中、やってくる建国記念の祝祭。だがそのお祝いの場は、近衛騎士達の突如とした反乱により血が舞い散る場と変わり。半壊した近衛騎士達に代わり、皇帝陛下の依頼によりジン達は皇子であるクリフォードの護衛を引き受ける事となる。

 

無垢な第二皇子、デイヴィッドとその母親であり皇帝の後妻であるオーガスタと出逢うも早々、女好きなクリフォードに振り回される事となるジン達。

 

「もう少し歩き方に注意を払われた方がよいでしょう」

 

 が、しかし。事件の裏の黒幕を独自に追い出したジンは、クリフォードの秘密を知る事となる。それは今の彼は、公的には記録を抹消された双子、ミラベル(表紙右)が影武者を務めているという事。だがその秘密を共有した後に間を置かず、「クリフォード」の過去の恋人である貴族令嬢、エレミアとその従者たちが自爆兵器へと改造された形で襲い掛かってくる。

 

こと此処にいたって、もはや疑う余地もなし。この裏に蠢いているのは、前巻の騒動の黒幕であるスカラザルンであるという事。そう、終わってはいなかった。これは前巻から続く騒動の、第二幕なのである。

 

敵の本拠地へ向かうジンとヴァネッサを迎撃する、スカラザルン側の指揮官、グレーテル。その裏、まるで同時進行するかのように発生するクリフォード達を襲撃する、スカラザルンの魔獣達。

 

―――しかしそれは、本当の意味での今回の黒幕の思惑通り。逃れられぬ場面に陥った時、黒幕は真に牙を剥く。その思惑の根底、そこにあるのは愛。そして愛を思うからこそ、の狂気。

 

「私は、自分の身を自分で守れるようになろうと思ったのよ」

 

守ったとしても全てを守れる訳じゃない、全てを救えるわけじゃない。苦い結末の先、ジン達の元に教え子としてミラベルが加わる。それが今回、唯一掴んだもの。

 

より苦く、多様的に。ファンタジーとして独自の領域に踏み込んでいく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

絶対魔剣の双戦舞曲(デュエリスト)2 ~暗殺貴族が奴隷令嬢を育成したら、魔術殺しの究極魔剣士に育ってしまったんだが~ (HJ文庫) | 榊 一郎, 朝日川日和 |本 | 通販 | Amazon