読書感想:勇者になりたい少女と、勇者になるべき彼女

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は多分、スマホは持っておられるであろう。寧ろ今の世の中においては持っていない人の方が少ない、スマホという存在。検索から取引まであらゆることが出来て、今や生活の中に必要不可欠であるというのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。 しかし利用しすぎると依存症、という事になり。更には、いつの間にかスマホに縛られている、といっても過言ではない状態と言えるかもしれぬ。

 

 

便利な技術も使い物、まぁ言ってしまえばそんな訳である。この作品においても、そんな技術が存在するのだ。

 

人間と魔族、長い戦いが勇者と魔王の相討ちにより終わり、両陣営の間で和平が結ばれたとある異世界。かの異世界、人間サイドでは戦後、後進育成のために「ギア」と呼ばれる、まるでAIのような知能を宿した、あらゆることをサポートする魔道具を開発し。そのギアを、絶対の規範として、生活していた。

 

 

「・・・・・・お腹がすいた」

 

 

そんな人間の国の、勇者を育成する学校がある街を訪れた一人の少女。彼女の名はルチカ(表紙左)。魔王の娘である彼女は、しかし極度の空腹で倒れそうになった所を、勇者学校の受験生である、勇者の娘、レオニー(表紙右)と、彼女の幼馴染であるノールに助けられ。更には、勇者学校からの退学者であったひったくりを共に捕え、受験に必要なギアを、レオニーから借り受けて。試験へ臨む事となる。

 

「キミ、ボクと番にならない?」

 

試験の中、目撃する事となるのは勇者の娘としてはあまりにも実力が低すぎるとして疎まれ、それでも勇敢に戦う彼女の姿。それを目撃し、きゅんと来たルチカは心のままに番の申し込み、要はプロポーズを敢行し。 すげなく断られるも、とりあえず入学試験には合格し、彼女と共に通う事となる。

 

魔族の娘と、勇者の娘な出来損ない。彼女達を取り巻く周囲は、悪意に満ちており。勇者学校の教師であるアリザは、彼女達を退学に追い込もうと目論み、その娘である学生、ダニタは攻撃的な性格故にルチカやレオニーと衝突する。

 

 

「友だちを守るのに、理由がいるかい?」

 

それでも、その全てを跳ね除けんとルチカは突き進み、レオニーも引っ張られるように前を見ていく。 戦うのに、理由はいらない。例えぶつかり合っていても、友達だから。ならば助けるのに、理由はいらないと。強大な敵相手でもひるまず挑んでいく。楚の真っ直ぐさが爽快な輝きとなり、周囲を魅了していくのである。

 

 

少女が少女に出会う、そして乗り越えていく。ちょっと厳しい世界観の中に明るさが溢れているこの作品。明るめのガールズファンタジーが読みたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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