読書感想:勇者認定官と奴隷少女の奇妙な事件簿

 

 さて、当たり前の事であるが詐欺は勿論犯罪である。あやってはいけない事である。しかし、詐欺の手口を見ていると日々あの手この手で進化を遂げている事が多く、確かに対象の層を絞ってみれば、成功するかもというものも多い。つまり何が言いたいのか、という事であるが。皆様も詐欺には気を付けましょう、という事である。

 

 

この前置きからも、画面の前の読者の皆様は何となく察していただけたのではないだろうか。この作品のあり方を。王道的なファンタジーの中、搦め手ありのミステリーが描かれるのが今作品なのである。

 

とある世界の西端の王国に魔王と呼ばれる存在が出現し、危うく世界を滅ぼしかけ。民衆の中から見つけ出された「勇者」により魔王は下された後。責任の追及から逃れるために、当時の国王により、将来の魔王の復活に備えるために複数名の勇者を保護しストックしておくという「勇者認定保護制度」が制定され、はや百年。

 

「世知辛い世の中ですねー」

 

 百年も経てば、脅威の記憶は薄れるもの。もはや役人の保身のために存続するその制度は、腐敗と偽造に満ちていて。 そんな勇者達を審査すべく、国の中央からの命により各地を回る認定官のミゲル(表紙左)と、その助手であり奴隷でもあるディア(表紙右)。彼等は今、不可解な事態に出会っていた。審査の必要もない程の真っ当な勇者であり次の審査対象のヘロニモは姿を消し。街の周りには吸血鬼の噂が立ち、少し離れた鉱山の町には「勇者の生まれ変わり」であり数々の奇跡を起こす「聖勇者」の話が巻き起こっていたのである。

 

泊まる場所もないため、先に鉱山の町の聖勇者を調査する事にし。到着して早々、教会の下働きである破落戸、ガスパルと教会の司祭であるサーラスに出迎えられ。教会にて、聖勇者である少女、アリアドナの奇跡を目にする。

 

 だが、どうにもミゲルは気にかかる事があった。まずは搦め手で攻める為、アリアドナの周囲に接触しようと見張っていれば、教会からこっそりと抜け出したアリアドナと接触し。彼女の勇者としての適性を図る事には成功するも、本人曰く只の村娘であるアリアドナの願いをかなえるために彼女の故郷を訪ねてみれば、一気に不穏さが増していく。

 

突如全員姿を消した、彼女の故郷の村。その村で遭遇するのは、「煤かぶり」との異名を持つ悪名高き魔術師、ロレンソ。酒をごちそうしてみれば意外といい奴だったガスパルから聞き出したのは、サーラスがもともとよそ者であるという事実と、アリアドナの前に一人「聖勇者」がいて、その者は謎の病気で亡くなっているという事。

 

一体どういうことなのか。ここに何が伏せられているのか。調査を進める中で一瞬のヘマを突かれて黒幕により拉致され。優しい少女の手を借り脱出し、迫るのは全ての真実。失踪したヘロニモと、吸血鬼事件を繋げる全てが繋がった事件の全貌。

 

それを見逃す黒幕ではなく、ディアの命を人質に取られ、交渉で敗北に追い込まれそうになり。

 

「だめなんだよ、それじゃあ」

 

 だが、黒幕の考えはミゲルにとって到底納得できるものではなかった。彼は知っている、脅威は未だ無くなっていない事を。だからこそ退場させる為、ミゲルは自身とディアの秘密を明かし、全てを理不尽に終わらせる。

 

何度かひっくり返してくる、推理できる面白さのミステリーである今作品。異世界でミステリーしたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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