読書感想:清楚怪盗の切り札、俺。

 

 さて、時に想う次第であるが世界一有名な怪盗とは誰なのであろうか。キャッツアイの三姉妹、と答えられる方もおられるかもしれない。ルパン三世と答えられる人もおられるかもしれない。多くの人はルパン三世、と答えられるのではないだろうか。では怪盗、というのはどういう人達を言うのか。それは画面の前の読者の皆様も多くの方がご存じなのではないだろうか。怪盗、即ちお宝を盗む、そんな者達である。

 

 

その行いは現実世界においても、異世界においても変わらない。この作品は異世界の怪盗たちのお話であり。凸凹コンビな二人の怪盗が、お宝を盗む為に何だかんだでコンビを組むことになるお話なのである。

 

魔術と言うものが存在するも、それが誰にでも扱えるものではなく。かつて女神が編み出したとされる十七種の魔術を、魔導紋と呼ばれる紋章を持つ者にしか詠唱できぬとある異世界。この世界にある世界有数の騎士国家、ユースティス神聖王国。

 

「―――いいね。どうやら俺は、とことん運がいいらしい」

 

その国で活動する有名な盗賊、アッシュ(表紙右)。調子に乗りやすい性格から「最凶の小悪党」という異名で呼ばれるも、本人は頑なに「盗みの天才」と名乗る彼。魔術を盗む異能を持ち、この国の最大宗教の名誉司教に盗みを教えられたと語る彼はある日、伝説の怪盗、ノア(表紙左)の予告状を目にし。先んじてお宝を盗み出すべく、予告された地へ向かう。

 

「―――ぼくは、きみみたいな”切り札”が欲しかったんだ」

 

 

 が、しかし。待ち構えていたノアは語る。自分が盗み出したかったのは、アッシュであると。アッシュを育てた名誉司教、メビウスを倒す為に手を貸せという彼女に、故郷の村の壊滅の事実を知った彼は、利用すると言う名目で協力する事を選び。ここに協力関係は結ばれる。

 

ノアの狙い、それはメビウスの婚約者である変わり者の王女、シンシア。彼女の心を奪い寝取る為に接触し、貧民街での炊き出しが日課である彼女に協力したりする中。 シンシアの優しさに触れ、ノアの思いに触れ。アッシュの中で何かが変わっていく。

 

「―――俺たちは、とっくに勝ってるんだよ」

 

その思い、それは怪盗としてではなく人として、大切なもの。盗むだけではなく、盗んで守るために。彼女の「切り札」として。仇敵との死闘の中、頼れるのは切り札である己を切る者。そして怪盗だからこその、正々堂々ではない卑怯な策略なのだ。

 

凸凹な二人の愉快な痛快なコンビネーションが熱さを齎しているこの作品。新しい熱さを楽しみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 清楚怪盗の切り札、俺。 (ファンタジア文庫) : 鴨河, みきさい: 本