読書感想:最強落第貴族の剣魔極めし暗闘譚

 

 さて、戦いは数だよ兄貴、といった誰かが昔いた訳であるが。実際の所、装備が同じレベルと仮定するのなら、数が多い方が勝つ、というのはそうなるであろう。しかし、ラノベの世界、そこで行われる戦いものにおいては、究極的な力を持ち一個人で戦争をひっくり返す、最強の者がいることが多い。 身もふたもない事を言ってしまえば、その方が見栄えがいいから、というのもあるかもしれない。

 

 

 

 

だがそんな存在とて、一個人では限界がある。なれば自分の代わりが出来るもの、自分に何かあった時に継げるものがいるかもしれない。この作品はそういった側面を持つお話なのである。

 

「お兄様はやらないだけです」

 

歪なDのような形をした異世界の大陸、ロディニア大陸。この大陸のほぼ半分を領土とし、近年積極的に侵攻政策をとっているガリアール帝国。この帝国は、大陸北西部に位置するアルビオス王国とルテティア皇国、その二国を支援する小国、ベルラント大公国。この「三国同盟」に苦戦を強いられていた。この三国同盟により創られた、グラスレイン学院。この学院に通う、大公国出身の少年、ロイ(表紙左)は落ちこぼれである。

 

 だがしかし、彼には隠された顔がある。剣の国、アルビオス王国最強の剣聖、クラウド。魔法の国、ルテティア皇国最強の大賢者、エクリプス。どちらも彼である。式神という技で不在を誤魔化しつつ。三国を護る為、日夜飛び回っているのである。

 

表の顔は無能な落ちこぼれ。裏の顔は二つの最強。何故、彼は一人で二役を抱え込んでいるのか? それは身体が弱いけれど、自分と同じ力を持つ妹、レナに背負わせぬ為。だからこそ、家族を守るために。彼は一人で全部を背負い込むことを選んだのだ。

 

そんな中、望まぬ婚約に揺れる同級生、ユキナ(表紙右)をひょんな事から助けた事で注目される事となったり。更には趣味である風景画を描こうとしていたら出会った、未熟な魔法使い、アネットとも仲良くなる事となって。 気が付けばいつの間にか周りに関係性が出来ていく中、帝国の大侵攻と、その裏での本命、学院への奇襲作戦をキャッチし。全てを守り抜くために悩み抜き、父親や兄にも協力を仰ぎ。自らの二つの顔を使い分け、話しを無理矢理にも通す事で。全てを抱え込む防衛戦が幕を開けていく。

 

 

「あまり好みではない」

 

戦場となる学院、ユキナもアネットも全力を尽くし。しかし帝国と組んでいた伝説の存在、魔族の策略により絶体絶命となる中。クラウドとして駆けつけ、あまり好みではない技で、一撃でかたをつけていく。

 

「・・・・・・君のことを侮りすぎたな」

 

その先、出来るのは押しかけの弟子。その関係の締結は一体、どんな展開を生んでいくのか。

 

正体を隠しながら真っ直ぐに無双する、そんな面白さがある作品。暗躍無双ものが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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