読書感想:辺境都市の育成者5 神降りし英雄

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前巻感想はこちら↓

読書感想:辺境都市の育成者4 星落の魔女 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品における敵と言うのは「全知」と呼ばれた英雄の遺児達であり、その動機に謎が多いハルの過去が関わっている、というのはこのシリーズを読まれている読者様であればご存じであろう。しかし、どうやらそうも言っていられない、というよりかは状況はそう簡単ではないらしい。そんな事実が明らかとなるのが今巻なのである。

 

 

南方大陸にてハルの弟子と最強集団の一つ、「十傑」の中の二人の激突が大陸を文字通り揺らす中、進む魔神の封印準備。しかしその道のりは未だ果てしなく、最強の一角であるはずのレベッカですら想像も及びつかないようなとんでもないものとなるような予感を思わせる。

 

「古い教え子の二人とエルミア。そして、君とタチアナだけだ」

 

しかし、彼女へ示されるのは新たな力への扉。ハルの使える魔法の中でも最高クラスの魔法、「時詠」を使いこなせるかもしれぬと言う言葉にレベッカは奮起し、更なる修行に励んでいく。

 

 その最中、カサンドラより齎された黒外套たちの行方の一報。攫われた勇者、及び出奔した前近衛騎士団団長の行方は南方大陸にあり。その方を受け、レベッカとエルミアと共にハルは急ぎ南方大陸へと向かう。

 

彼の地で待っているのは、新たなる出会いと新たなる戦い。レベッカはハルの弟子である「拳聖」ラカン、彼と共に行動する狐族の巫女、「嵐刃」スグリと出会い、彼等と手合わせし新たな力を掴もうと藻掻いていく。

 

彼女を余所に、ハルは「十傑」の一人、秩序なき南方大陸に国を打ち立てた英雄、「四剣四槍」ルゼと出会い。戦いの中で誰かに盛られた毒により、解呪不可能な病魔に侵される彼女を救うために奔走する。

 

 挑むはハルを以てしても成功率は低い、正に賭けともいえる一か八かの治療。だがその隙を突き、ルゼを狙い十傑が襲来する。かと思えば、彼等に同道していた謎の老人が魔神の欠片を奪い取り、ハル達の目の前でルゼを「器」として魔神を顕現させる。

 

ハルが叫んだその名は冬夜。大罪人の一人、六英雄の一人でもある剣聖の名。

 

「ハル! 忘れたの? 私は貴方の【剣】なのよ?」

 

「ハルさん、私は貴方の【楯】なんですよ? 使って、もらわないと困ります!」

 

優先すべきは一つ、六英雄にも迫る力を持ってしまったルゼを救う事。いつもの態度を捨て去り本気となったハルの元、最強の弟子達に混じりレベッカと、後から合流したタチアナも戦場に立つ。

 

「―――吾輩と姉弟子、そして師が死力を尽くせば」

 

「救える確率は一割弱といったところだ。悪い賭けじゃない―――来るぞ」

 

 絶対に助けると約束した。だからこそ、例え可能性が低くても。死力を尽くし、弟子たちと共に不完全な魔神へと立ち向かうハル。しかし、根本の闇は取り除けず。黒幕は更なる手の為に動き出す。

 

 

「全知」の遺児達とは別に蠢く「女神教」。その裏で糸を引く「剣聖」。更には姿の見えぬ協力者。剣聖は「全知」の遺児達をも欺き利用し、「秋を殺した」ハルに復讐すべくその思惑を巡らせる。

 

一体、ハルの過去に何があったのか。彼が勇者を殺したと言うのはどういう事か。

 

その答えの一端は、次巻で明らかになるのかもしれない。