読書感想:経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その7

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。 その6 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の最後の方で判明した次第であるが、何とこの作品の主人公である龍斗とヒロインである月愛は、付き合ってキスまではしているけれどその先までは未だ進んでいない訳である。信じられないかもしれないが本当の話だ。月愛の方は経験済みだし、若いというのはどんどん勢いで進みそうなものではあるが。 では何故そうなっていないのか、という辺りも書いていくのが今巻である。

 

 

実は一線を超えるチャンスが無かった、という訳ではない。寧ろきちんとチャンスはあったのだ。しかし淫行条例とか気にしてそれでも、婚姻する予定だからと越えようとしたら、実はたいしたことなかったけれど、龍斗の母親の体調不良により、いいムードになっていた時を叩き潰されて。 結局それで、今までずるずると引き延ばしてしまっていたのである。

 

「人はそれを『愛』などと称するのではあるまいか?」

 

しかし、絶対にこの夏で。2人きりでの沖縄旅行で決めて見せる、という決意をする彼の胸を揺らすのは、親友である久慈林くんの哲学的な一言。それは正に的を射ている。二人の関係は遅々として進まずとも、既に「愛」になっていたのである。

 

そんな中、夏が近づく中で様々な出来事に直面していく。頼れる恋を探す海愛が、チャラい作家の毒牙に引っ掛かりそうになったり、月愛の双子の妹も連れてまるで家族連れの様にデートをする事となったり。こちらもなかなか進まない、蓮と笑琉の話を聞く事となったり。 皆がみんな、それぞれの思いを抱えている。皆、自分だけの特別を、大切を探している。その先に自分達もまた、大切なものを、と。その先まで進む事で、もっと特別に、と願い、来るべき旅行の日に気合を進めて、進もうとする。

 

「してもしなくても、俺は月愛が好きだよ」

 

だけどそれは大切な事じゃない。無理に進まなくたっていい、一歩ずつ、のんびりでもいい。改めて向き合い、お互いに想いを見つけて。また進まず停滞したけれど、それは心地よい停滞。温かくて優しい現状を選んだ二人の元、友人から飛び込んできたのは衝撃的なお知らせ。

 

果たしてそれはどういう事なのか。そのお知らせはきっと、二人の間で未来の事を考える鍵となるのだろうか。

 

この作品らしい選択が選ばれる今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その7 (ファンタジア文庫) : 長岡 マキ子, magako: 本