読書感想:どうしようもない先輩が今日も寝かせてくれない。

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 さて、少し前に某岡崎を拠点に活躍するyoutuberの方がモンハンを丸一日と半日以上プレイされる動画を投稿されていたが、画面の前の読者の皆様はゲームはきちんと時間の節度をもってプレイしていただきたい。ゲームが楽しいのは当たり前の事である。だが睡眠時間を削り過ぎるとどう考えてもロクな事にはならないのは明確であるので。

 

 

だが、この作品においてゲームは重要な要素である。そして、主人公とヒロインを繋ぐ鍵なのである。

 

とある高校に存在する、部員二名の生徒会非公認(?)の部活、遊戯部。罰ゲームをかけてあらゆるゲームで勝負する。そんなゆるゆるな活動内容なこの部活。

 

 そんな部活の新入部員、秋斗。先輩であり部長の遥(表紙)。この二人、ただ二人だけの遊戯部部員のこの二人は。何を隠そう両片思いの状態なのである。

 

「遥先輩! 安心してください! 俺は遥先輩を絶対に口説きませんから!」

 

「何で! どうして!?」

 

が、しかし。美少女であっても中身はゲーム狂な残念美少女、遥と天然系鈍感というある意味王道な性格の秋斗。遥からアプローチしても明後日の方向に勘違いした秋斗がフラグを叩き折ると言う形で、中々その関係は進展しなかった。

 

そんなもどかしくこそばゆい関係の二人に一つの転機が訪れる。「愛してるゲーム」という、どう見てもバカップルなゲームの罰ゲームで課された毎晩、遥に電話をかけるという事によって。

 

 電波で繋がった、二人きりの空間。そこで交わされる睦言は、いつにもましてこそばゆく、そして無自覚ないちゃつきに満ちていて。

 

遥の薄着な寝巻を目撃してしまって思わず照れたり。もう少しだけとお願いして、もうちょっとだけ電話したり。

 

そんな甘々なやり取りの中、また罰ゲームでデートしたり、秋斗の家を訪ねたり。

 

 甘い日々の中、徐々に語られていくのは二人の過去、そして二人がお互いに向ける想いの深さ。

 

高校デビューに失敗して絆を築けなかった秋斗にとって、遥は唯一自分を必要としてくれる人だった。

 

勝利に拘り過ぎて周りとの軋轢を招き、嫌いになったバスケから逃げて。弱い自分を受け止めてくれたのは秋斗だけだった。

 

「そんな遥先輩が大好きです」

 

 そして、昔の自分と今の自分、二つの自分の間で揺れ秋斗の目の前から去ろうとした遥へ、秋斗は必死に手を伸ばし想いを伝える。昔の貴方ではなく、今の貴方だけが好きだと。

 

大切なのは、自分に嘘をつき続けることじゃなく。弱さに立ち向かうのではなく、その弱さごと抱えて進んでいく事。 それに気付けた時、遥もまた過去を一歩超え、歩き出す。

 

両片思い、而して内実は下手な恋人よりも恋人らしく。打てば響く、そう言わんばかりに甘さ溢れるやり取りが目白押しであるこの作品。コミカルに、けれど肝心な所は真っ直ぐに。そんな心の触れ合いが丁寧に描かれているからこそ甘く、面白いのである。

 

 

全てのラブコメ好きな読者の皆様、じれったい関係が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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