読書感想:スペル&ライフズ1 恋人が切り札の少年はシスコン姉妹を救うそうです

 

遊戯王デュエルマスターズヴァンガード、ビルディバイド、シャドウバース。これは最近までアニメが放送されていた、もしくは現在アニメ放送中のTCGアニメの私の知る限りである。画面の前の読者の皆様も、TCGのアニメを見た事のある、もしくはTCGをプレイしたことのあるという読者様もおられるであろう。だが、最近のTCGアニメは生温い、と思われる読者様はどれだけおられるだろうか。何故、世界の行く末を賭けてバトルをしないのか。何故、自らの全てを賭けてバトルをしないのか。生を賭けるからこその緊張感があると思うと、最近の何も賭けないTCGアニメは、生温く感じられるのではないだろうか。

 

 

だが安心して欲しい。この作品は、主人公である少年、駿自身が命を賭けて戦っている。決して生温くはないのである。

 

僕となるクリーチャーを「ライフ」、様々な異能を発揮する「スペル」。その二つのカード軍を総称し、「スペル&ライフズ」と呼んだ。その力を操る素養に目覚めた者を「プレイヤー」と呼び、彼等は研究の為に生み出された人工島、「色藤島」に集められ生活をしていた。様々なTCG的ルールの元、表は平穏、裏は奇々怪々。二面性を持つ島で駿は、かつて巻き込まれたとある実験で離ればなれとなった妹を探し。交わした約束に縋り生きていたのである。

 

「やり過ぎない程度にな」

 

「わかった、こわさないようにする」

 

そんなある日、駿の「恋人」を名乗る少女、ミラティア(表紙)と共に巻き込まれたチンピラプレイヤーの暴挙。そこから助け出した、不正渡航者の少女、咲奈。音信不通となった姉を探し訪れた彼女が言っていた手掛かりの中、自らと因縁のある実験の匂いを掴み。彼女に協力し、彼女の姉を探す事となる。

 

 ある時は空を駆け、またある時は地下闘技場で暴れ回り。そんな中、駿の知己の相手である情報屋、夜帳から得た情報を元に向かった先。そこに待っているのは、予想外の敵であった。

 

その名も「女帝」、ヘレミア。意志を持つライフの一体であり、「運命シリーズ」と呼ばれる最高レアリティのライフの一体。彼女の目的は一つ、「恋人」であるミラのみ。咲奈の姉を手勢として取り込み、咲奈すらも諫言で味方に引き込み。ミラティアとの契約の関係から、自分の身で戦うしかない駿は既に満身創痍。周囲は既に四面楚歌、正に絶体絶命の危機。

 

「うっわ、悪い顔してるわね・・・・・・」

 

「あるさ。ずっと隣に―――切り札は変わらねえ、俺の恋人だけだ」

 

・・・と、そう思ったか? 窮地なんて誰が決めた? 先に察していただけていると思うが、この作品は異能バトルであり、同時にTCG的ゲームである。カードゲーム、そこにあるのは騙し合いと読み合い。それは正にメタゲームのように。始まる前から戦いは既に始まっている。そして策に溺れ敵を見誤ったのならば。既に彼の策略の中、逃げ場はないのである。

 

己の身と命を賭して強大な敵に挑む異能バトル、そしてカードゲーム的なルールの元で繰り広げられる死闘。ああ、正に満足である。やはりカードゲームは命を賭すに限る。命を賭してこその輝き、それがこの作品にはあるのである。

 

心燃える異能バトル、カードゲーム的バトルが読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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