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読書感想:忘れさせてよ、後輩くん。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻に引き続き一年ぶりの続刊であり、思わず遅かったじゃないか、といい声で言いたくなるかもしれぬ今作品。しかし待たされた分の面白さは確かにある、と私は言いたい。では今巻では何が起きるのか、という事であるが。読み終えた後、画面の前の読者の皆様はこう言いたくなるかもしれない、某主人公が如く。やりやがったな、と。
それはどういうことなのか、という事であるが。全ての前提が覆され、本当の意味でのラブコメが描かれる、という事であり。今までは謎の、現象のような存在だった海果に焦点があてられるのが今巻なのである。
「いまの夏梅くんがやるべきことは、本当に自分がやるべきことに気づくことだと思うけどな」
十二月、夏梅、推薦受験に失敗す。春瑠と同じ大学へ行く最短の好機を失い、冬莉に心配されながらもがむしゃらに受験勉強に進み。そんな中、彼女なりに気遣ったのか、イルカの髪飾りを無くしたという海果に付き合い、町中を歩き回って。
そんな中、不意に夏梅の中にモノクロの記憶が蘇る。それは彼の思い出とは整合性のとれぬもの。その記憶のフラッシュバックと共に、何故か海果へとよく分からない思いが募ってきて。 一時帰省した春瑠は、夏梅に思いを自分に向けていない、という事実を突き付け、正式に夏梅は失恋し。やるべき事として、海果へ向き合う事となる。
「ここまできたら引き返せないよな」
記憶の中にいる、海果らしき年上の女性。だけど今の海果は年下のような存在。それはどういうことなのか。調べ始める中、判明するのは衝撃的な話。十年前、海果は行方不明となっていた、という事。それはどういうことなのか? その秘密にどんどん迫る中、海果は行方をくらませる。
「黙って見てろ!! 僕の初恋の結末を!!」
明かされていくのは本当の記憶、本当の思い出。あの日の彼女との記憶、そして彼女が幸運のイルカに囚われた理由。思い出した約束、それは彼女こそが一人目、終わらぬ夏に囚われていたと言う事実の明示。 十年後にその返事を、その約束を叶える為。何故か応援してくるイルカの幻影に言い返し、夏梅はその答えとなる場所へと走っていく。
その先にどんな結末が待っているのか、それは是非皆様の目で見届けてみてほしい。
しかし、きっとこれだけは確かであろう。「忘れさせてよ、後輩くん。」このタイトルには、言葉よりも様々な意味、誰かの思いが込められているという事が。彼等はきっとあの町でこれからも、生きていくのだ、という事が。
シリーズファンの皆様、最後まで是非満足して欲しい。
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