読書感想:魔王にさらわれた聖王女ですが、魔王城ぐらしがヒマだったので禁忌魔法で暴れます。

 

 さて、自分が生きている環境、というのは当たり前に存在しているようで当たり前ではない。例えば引っ越しのような事をすれば生きていく環境は変わる。ではそう言った場合において大切なのは何か。それは適応力、なのではないだろうか。環境がどんなに変わっても、適応する力。生きていくうえで必要なのは、そういった力もあるのではないだろうか。

 

 

と、いう意味から見るとこの作品の主人公であるミル(表紙)は適応力が半端ではないと言っても過言ではないのだろう。それがどういう事なのか、はここから語っていきたい。

 

とある異世界に存在する王国、聖アーフィル王国。かの国の王女であり、人の潜在能力を見る力と、スキルの開花を行う力を持つ彼女は、冒険者達から引っ張りだこ。王都が「はじまりの街」と呼ばれる理由の一端を担っている。そんなある日、彼女は魔族の長であるアルヴァンに、魔族全体のレベルアップのために誘拐されてしまう。

 

「お前という生き物がわからん」

 

 が、しかし。普通の姫なら怖がるような場面であろうが、ミルはアルヴァンに呆れられるほどに心をわくわくに高鳴らせていた。何故ならば、冒険者達の冒険譚を聞く中で自分もまた、冒険する事を夢見ていたから。彼女にとって魔族は正に憧れ。求められるままに魔族のレベルアップに励み、少しの時間が経過し。非日常が続けば日常になると言わんばかりに、ミルは早くも魔王城での日々に飽きてしまったのである。

 

退屈を伴うようになった日々の中、訪れた武器庫と宝物庫。その中で冒険に必要な幾つものアイテムを見つけた事で高まる、冒険への意欲。普段であれば止める者もいただろう。だが今、最早彼女を止める者も無し。魔族達を訓練相手に、魔導書で禁忌魔法を学び力を磨き。あっという間に魔族の実力者に一目置かれる実力になった彼女は、城を抜け出し。王都へ向かい旅を始める。

 

それは正に、旅路を逆にたどるようなもの。ゴールから始まりスタートへ帰るようなもの。道中に現れる凶悪な魔物も何のその、興味のままに可愛がり、時に禁忌魔法で蹴散らして。

 

正に珍道中のような旅の中、魔王城近くの村で規格外な魔法の力を持つ少女、ユーリアを仲間にし。更に訪れた獣人の里で、食いしん坊の剣豪、クロも味方にし。魔族の追手を軽々と蹴散らし、彼女達は道中で様々な噂を振りまきながらも旅を続ける。

 

「私はまだドキドキしたい」

 

旅路の中、魔王の娘であるマリーと出会い、ガルーダの卵を手に入れる為に共闘し、更には魔族の追手と激突し。その中で問われる冒険への思い。答えるのは憧れを日常にした彼女だからこその答え。それを貫く為、彼女は放つ。魔も聖も合わせた彼女だからこその一撃を。

 

明るく楽しく、元気のある冒険が繰り広げられるこの作品。心を元気にしたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

魔王にさらわれた聖王女ですが、魔王城ぐらしがヒマだったので禁忌魔法で暴れます。 (ファンタジア文庫) | 永松 洸志, 希望 つばめ |本 | 通販 | Amazon