読書感想:義理の妹と結婚します

 

 さて、ついこの間も義妹がメインヒロインとなるラブコメを見た気がするが、最近、義妹系のヒロインが幾度目かの流行の兆しを見せているのだろうか。と、いうのは分からぬが義妹系ヒロインというのは独特の良さを持っているものであり、一つの大きなジャンルである、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。

 

 

ではこの作品はどういった作品なのかという事であるが、タイトルそのままである。著者であられる鈴木大輔先生が、義理の妹がヒロインである作品に向けての「怒り」を原動力に書かれた作品なのだ。

 

「僕は彼女を―――近衛トーコさんを、性的な目で見ます」

 

「怒り」、というのはどういうことなのか。それはあまりにも「物分かりが良い」主人公が多すぎる、というもの。確かにそうかもしれない。思えば確かに、義妹がヒロインである場合はまずは適切な距離を保ち、そこから距離を縮めていく、というのがいつの間にか当たり前になっていたと思われる。そんな王道に真っ直ぐに喧嘩を売っていくのがこの作品の主人公、タクローなのである。親の再婚によりできたぎゃるな義妹、トーコ(表紙)を一目見、いきなりの宣言をぶちかます。一線は守りつつもきちんと欲望を抑えぬ、言わば理知的な暴走宣言を。

 

当然そんな事をしてしまえば、トーコからの好感度は-を振り切り、最早-∞からスタートするのも当たり前である。どう考えてもフラグが立つ前にへし折れている。それでもタクローは、ずけずけとトーコの所まで踏み込んでいく。自分達の生活に関わる「契約」を結び、それを建前にまずは義理の兄妹として仲良くなるべく踏み込んでいく。

 

「どこが”ちょっと”ですか!」

 

そこへ絡み、発動していくのはタクローの「ちょっと」ばかりのおっちょこちょいなスキル。まずは生活の準備を整える中、どこぞのジャンプ漫画の主人公かと言わんばかりの頻度でラッキースケベを手繰り寄せ。トーコの服を透けさせるだけでは飽き足らず、押し倒したり下着を見たり、更には期せずして膝枕に持ち込んだりと、怒涛の勢いでトーコを振り回していく。

 

「君はとっくにリセットされているから」

 

そんな彼を、トーコは引き離そうとする。だが何故か、結果的に彼は自分の元に戻っていく、変人ではあるけれどきちんと慕われている彼の人間性を目撃していく、彼が自分の心の中気にしていたことを見抜いて声を掛けてくる。いつしか彼への好感度が、少しずつ上昇を始める。素直にはなり切れぬけれど、気になりだしていくのである。

 

だけど彼女はまだ知らない。彼の親友と、友である副会長も彼に負けず劣らずの奇人変人である事を。故にきっとここからなのである、振り回しの本番は。

 

真っ直ぐすぎる主人公に振り回される、ドタバタな恋路が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。