読書感想:山本君の青春リベンジ!

 

 さて、リベンジとはその意味を改めて解説するまでもないであろう。そしてリベンジ、というのは時に青春という枕詞に付随して使われる事がある。青春をリベンジ、するというのは見返したり、やり直したりする、という事である。ではそのような事を望む、というのはどういう場合か。それは青春というものに未練、後悔があったりする場合が多い。

 

 

ではこの作品の主人公、流伽はどうなのであろうか。彼の特徴としては、その巨体としか呼べぬ巨漢ぶりにある。力士だとしても絶対に重すぎる130キロほどの身体を持つ、言ってしまえばデブな彼。しかしその巨体は、別に不摂生により齎されたわけではない。その身体を齎してしまったのは、「DeBS」という奇病。体内の水分を吸って脂肪が肥大化するという、まぁ面倒にもある奇病が彼を小学一年生の事から犯し、望まないにもかかわらず彼はデブだったのである。

 

「もう十分だよ、君は優しいな」

 

そんな彼は周囲から浮いて、陰湿ないじめを受けるのは悔しい事だが当たり前、かもしれない。学校では不良やギャルにイジメられ、バイト先であるレストランではバイト仲間から揶揄われ、意地悪な親族からも嫌われ。それでも彼は、腐る事もなく真っ直ぐに育っていた。卑屈になる事もなく、生来の優しさのまま生きていたのである。

 

そんな彼に敵が多いけれど、味方も少しだけいて。妹である彩夏に気遣われたり、従妹である留美と仲直りしたり。その中で、クラスのお嬢様である千絵理をひょんな事から助けた事で、彼女の両親により一年の期間を要するアメリカでの治験の道が開ける。

 

無論、彼は英語を話せるわけでもない。だけど少しでも希望があるなら、とアメリカまで行き。若き天才医師、百合(表紙)の指導の下でまずは運動を頑張り、病院の人達と接する中で英語も身に着けて。気が付かぬ間に、彼の中に運動の経験値が溜まり、気が付かぬうちにとんでもない運動能力に目覚めていく。

 

「一般人レベルだと!? これが!? はっ、笑わせるな」

 

そして治験の最後、新薬による詰めで。脂肪が全て水分として絞られた事で。彼は普通の、人間としての容姿を取り戻す。その容姿は、彼には自覚は無いけれど、かなりの美形男子であった。

 

その通り、この作品は彼が青春をリベンジするお話である。しかし今巻ではまだ、リベンジの準備を整えるまでである。しかし鬱屈としたものの中に、彼の優しさと言う魅力があるからこそ、この作品は既に面白いと言える。

 

 

是非に爽快なリベンジを読んでみたいという読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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