さて、ノブレス・オブリージュとは訳すれば「高貴なる者の義務」、という訳であり貴族が登場し主人公になるラノベでは時々出てくる言葉かもしれないが。画面の前の読者の皆様は何か自分の義務として捉えられている事柄はあるであろうか。私個人としては、一読者として読んだラノベの感想を伝えていくのは、半ば義務のようなものと捉えている次第であるが。それはともかく、そのような矜持とも言える義務は、ある意味素晴らしいものなのかもしれない。
というのはともかく。この作品の主人公、ウルトス(表紙中央)もまた自身の中で矜持としている事がある。それは「クズレス・オブリージュ」。クズなりの流儀なのである。それはどういう事なのか。
「まだ引き返せるよな?」
ある日、ウルトスの中で目覚めた、この世界の真実。それはこの世界が育成もバトルも極められる、難易度鬼畜なエロゲ―「ラスト・アルカナム」の世界であり、彼自身はあまりのクズさと小悪党さに運営からもユーザーからも「クズトス」として嫌われ、主人公陣営と和解する事もなく、破滅のエンドを迎えると言う事。しかし中の人の記憶にある彼の容姿とは今は違い、そこから導き出されるのはまだ彼は引き返せる段階であると言う事。 引き返し、死ぬこともなく、モブとして生き残るために。彼はひとまず、性格を変え。いい子の方面で行く事とする。
「―――真実には、自分の足でたどり着け。自分の手でつかみ取った真実にこそ、意味がある」
・・・・・・さて、ここで幸か不幸か、悩む事となる。それはウルトスの中の人が、この先は知っていても、行動を変えてしまうとどうなるのか、という所まで思いつく頭脳は無かった、という事。 時に勢い、ハッタリ、口八丁。自分の考える計画を、無論誰にも相談できぬので自分なりに考え実施する、それが彼の知らぬ所で纏めて裏目に突っ込んでいくのだ。
お付きのメイドであるリエラ(表紙左)に心酔され、元S級冒険者である剣の指導者、エンリケには気に入られ。魔法の師匠であるカルラには甘やかされる事となり。更に始まりの街で遭遇したメインヒロインの一人、イーリス(表紙右)には気が付かぬ間に注目されて、気にされる事となり。 気が付かぬ間にドツボに嵌り込んでいる事も気づかずに。始まりの街に巣食う悪意に対し、謎の仮面の人物として対処し暗躍していく。
「アンタは一生そのままさ」
さて、そろそろお気づきであろう、画面の前の読者の皆様。彼を中心に据えた新たな、未知のルートが幕を開けたと言う事が。そして、奇遇にも彼に宿っている力は主人公、そしてラスボスと同じ。つまり彼は主人公にもラスボスにもなれる、という事。
ドツボに嵌っていくドタバタが、心にくすりと笑いを齎してくれる今作品。ファンタジーで笑いたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。