さて、ラブコメにおいて蚊帳の外、となるヒロインとはどんなタイプなのであろうか。例えば幼馴染と親友が恋のさや当てを繰り広げる作品であったとしたら、幼馴染も親友も、蚊帳の外にはならないであろう。だがもし、「相談役」のような立場のキャラがいたとしたら。 そのキャラは、相談役として信用されるが故に、恋心を抱かれぬのかもしれない。
しかし、この作品はそんな「相談役」、親友がメインヒロインなのである。クラスみんなの相談役である、真優（表紙）がメインなのである。
まずは母親が、運命の恋を見つけたと宣い出奔し、その数年後に父親が本能には逆らえないと宣い、再婚相手と連れ子の娘、そして息子である主人公、彰吾を残して出奔し。 そんな事があったからか、彰吾はそんな両親を反面教師に、誠実に、真っ直ぐに生きようとしていた。
「彰吾のことは私が一生お世話するから、どんな時でも捨てたりなんかしない」
「気持ちはこんな感じだよ？」
そして、両親と言う悪い例を見てしまったからこそ、彰吾は恋には奥手であり。その彼へと、幼馴染でもある梓と義妹であるゆいなが告白してきて。だが今までの生き方もあって、彰吾はすぐにはその告白を受け入れることが出来ない。
「あーあ。独り占めの時間が終わっちゃったなぁ」
しかし、きちんと向き合いたいと彰吾は真優に相談し。実は彼の事が密かに好きであった真優は、独り占めの時間が終わってしまった事を残念に感じながら、それでも思いを押し殺して、彼の事を応援し、恋を応援する事に決める。
が、しかし。そもそもアドバイス一つで彰吾の行動が改善させるわけもなく。そのアドバイス通りに出力できるほどの恋愛力が彼にある訳でも無く、結果的に彼の行動は梓とゆいなの恋心を更に燃え上がらせる切っ掛けとなり。
更には実は、真優にしかないアドバンテージがある。それは梓とゆいなと、彼と真優は通う学校が異なる、という事。 学校と言う部分が違うからこそ、彼の多くの時間に触れられず。 だからこそ、彼にアドバイスをする時間だけは、真優にとってのアドバンテージの時間。
そう、言ってしまえば、梓とゆいなは、まだ彼からは遠い。仲良くしながら、心の一線を超えていない二人とは違い、真優はその一線の内側にいる、と言っても過言ではない。
だからこそ、共に行動をする中で真優と彰吾は共に過ごす時間が増えていき。それを知ってか知らずか、真優の影には辿りつけぬままに焦燥を深めていく、梓とゆいな。
「だからね。全部伝えてみたら？」
そして彰吾へ真優が届けるのは、きちんと伝えるべきと言うアドバイス。それに基づき、彼は二人へ待っていて欲しい、という思いを伝え。梓とゆいなは連合する事を決意し、とうとう真優と遭遇したことで本格的にぶつかり合いが幕を開けるのである。
明るめに描かれるラブコメの中、譲れぬ思いが交錯する今巻。 真っ直ぐな思いが絡み合うのが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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