読書感想:創成魔法の再現者2 無才の少年と空の魔女 〈下〉

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前巻感想はこちら↓

読書感想:創成魔法の再現者1 無才の少年と空の魔女 〈上〉 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻は上巻、今巻は下巻。という括りからもうご理解頂けているであろう、二冊合わせて一つの物語の始まりとなると言う事は。そう、前巻でエルメスの兄であるクリスへの落とし前はつけ、エルメスにとっての決別は済んだ。では残るは誰か、其れは無論本丸である第二王子、アスター。ではここで画面の前の読者の皆様に問うてみるとしよう。果たして、アスターと決着をつけるべきはエルメスの役目であるのだろうか? 無論彼であると言う意見もあるかもしれない。だがしかし、彼と同じかそれ以上に決着をつけるべき因縁を持つ者がいるのも確かである。

 

 

そう、カティアである。エルメスにとって振りほどくべき枷がクリスであったように。カティアにとって振りほどくべき枷はアスターであると言えよう。未だにカティアに執心し、迷惑すらも顧みず無辜の民にすら手をかける暴君。その枷を振りほどく事こそ、彼女を前へと進ませる鍵。

 

 このまま二人で逃げてしまいたいという弱音をエルメスにやんわりと否定され、彼の師匠が何者かであるというのを教えられ。彼に教えられた事を胸に臨むアスターとの決戦。鍵となるのは彼女の血統魔法、「救世の冥界」の真の力。

 

死霊を呼び出しただ魔力に変換すると言う、まるで道具のように扱う力。しかしそれは「救世」なのか? 「救世」という言葉の真の意味、それが導き出す真の力。それがアスターとの決戦の中、趨勢を決める鍵となる。

 

ここに枷は解かれた、ならば後はエルメスの役目。自身の血統魔法、「火天審判」を暴走させ周囲を酷使するアスターに引導を渡すのも。急に出現した強大な魔物、ケルベロスと決着をつけるのも。

 

「僕の物語を、魔法にします」

 

 そして彼の手の中、「原初の碑文」の真価が目を覚ます。それは師が望んだ本当の意味。神の御業を再現せんとする御業、錬金術。魔法にとっての錬金術であれと願われたその真価、それは無限の創造性。魔法を種とし、知識と経験を水として。今この場を乗り切るための、不格好だけれどこれしかないという魔術が起動する。

 

裁くべきを裁き、納めるべきを納め。一つの歪みを正す事は出来た、しかしまだ根源的な病巣を切除することは出来てはいない。それ即ち、魔法使いの根源たる教育。

 

故、まだこの巻も始まりに過ぎぬ。もう降りられない、進むしかないこの国に対する戦いはここから本格的に幕を開けていくのである。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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