読書感想:レプリカだって、恋をする。2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:レプリカだって、恋をする。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、早速ではあるがここからはネタバレに配慮せず、前巻を読まれた読者様がこの巻の感想を開いているものとして話を進めさせていただく。前巻、レプリカ同士であるナオとアキのラブコメが始まり、そしてそれぞれのオリジナルとの対話で一つの結実を迎えた訳であるが。今巻を読むと、一つ、分かる事がある。それは、彼等は「レプリカ」の中では多分、幸せな待遇であるらしい、という事である。

 

 

そもそも考えてみて欲しい。「レプリカ」とは、オリジナルではない。しかし確かに存在しているし、不死身の存在、という事を除けばどこから見てもオリジナルと同じ人間である。しかし人間ではない。ならばどう、扱われる事もあるのか、という事である。

 

 

「ねぇ。しばらく私の代わりに学校行ってくれない?」

 

それはともかく、今巻のお話は幕を開ける。去年はナオは参加できず、アキはそもそも生まれていない文化祭、青稜祭の季節が迫る中、素直から持ち出されたのは暫くの代わり。今までのように飛び飛びではないその依頼に何か変なものを感じるも、それはナオにとっては渡りに船。

 

けれど直ぐに危機の機会がやってくる。前生徒会長の森先輩と、前副会長の望月先輩が持ってきたのは文芸部廃部の知らせ。それを回避するためには部誌を百部、端的に言うと今までの売り上げの二十倍売り上げろ、という条件を出され。打開策として、部員が一人しかいない演劇部と共同で、大胆にアレンジした「かぐや姫」のお話に挑む事となる。

 

そうと決まれば準備は始まり、演劇部の仕込みによる練習も始まり。何かが進んでいく中で、ナオとアキの距離も縮まっていく。その最中に蒔かれる、「この学校にはドッペルゲンガーがいる」、という怪文書。律子の捜査で行きついたのは、意外な犯人。

 

「ねぇ、おかしいよね。なんでわたしたちって、こんなにばかなのかなぁ?」

 

身近にいた犯人、新たなレプリカ。その役目は文字通りの身代わり。しかもそれは影武者のように。生まれてすぐにオリジナルと引き離され、あげく十数年が経ってから動けなくなったオリジナルの身代わりにされ、それを自分は受け入れてしまって。それが突き付けるのは、「レプリカ」というものの歪み。しかし今、ここにいるのは自分だ。始まる本番の中、新たなレプリカは自分の本当の思いを知って、オリジナルの思いを知って。 だけど唐突にその命は終わる。 オリジナルの死、という因果を以てレプリカも消え去る。

 

「好きなときに、好きなだけ泣けばいい」

 

ああ、彼女達レプリカには何故、感情があるのか。何故どこまでも人間のようなのか。その命は何処までも他人に委ねられているというのに。 けれど、変わってしまったのならもう止められないのだ。

 

 

レプリカ、という存在の在り方が更に切なさを突き付けてくる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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