読書感想:バレットコード:ファイアウォール2

f:id:yuukimasiro:20210805224051j:plain

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:バレットコード:ファイアウォール - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を読まれた読者様はこの作品の中で繰り広げられていたあまりの惨劇に思わず呆然としてしまったかもしれない。普通の子供達が背負うにはあまりにも重い真実と犠牲。その中でもこの作品の主人公である優馬とヒロインである千歳は何とか仲間と共に生き抜き、現実世界へと生還した。だが失われたものは戻らず、喪失を抱えて生きていくしかなく。そして現実はいつだって非情である。生き残った者にも安息の機会は訪れないのだから。

 

 

生き残り収容された、療養センターを兼ねた新たな学園。「あの戦争」を生き抜いた仲間達と育む絆は優馬の心を少しずつ癒していく。

 

だが、その心に差し込む影が一つ。恋人であったはずの千歳は、帰還するも優馬との思い出をすべて失ってしまっていたのだ。

 

あの世界で交わした睦言は自身だけが覚えている淡い記憶。それでも守ると心に決めた。しかし優馬もまた、大切なものを失っていた。あの世界で目覚めた、千歳を守る為の力は失われてしまっていたのである。

 

「初めましてだな、古橋優馬

 

 そんな彼は、とある最強の女性と出会う事になる。彼女の名は白亜(表紙右)。最強の盾、アイギスをコードネームに持つ電脳世界で人類最強と言われる女性である。

 

千歳と不器用に触れあいながら、再び来る脅威に立ち向かう為に白亜に師事し、その戦闘能力を全て吸収せんとばかりに修行に打ち込む優馬

 

 だが、状況はいつも待ってはくれない。AIの悪意はまだ、身近に潜んでいる。そして人間の邪な思惑も、すぐそばに潜んでいるのだ。

 

白亜に師事し、その背を追い戦場を駆け抜けていく中で知る白亜の真実。彼女の「後継者」となるのは一体、どういう事なのか。

 

水面下で揺れる大国の思惑は千歳に向かい牙を剥く。何故彼女を狙うのか。そもそも、何故彼女の記憶は失われてしまったのか。

 

そこに秘められているのは重要な真実。千歳という一人の少女の根底に関わる、白亜だけが知っている呪われし真実。

 

 だけど、それでも。大切な千歳を守る為。優馬は思い出した過去の記憶、大切な約束と共に自身の中の力へと向き合い、再び英雄の仮面を被る。今度は誰かの意志を越え、自身だけの譲れぬ願いの元に。

 

「行こうトーラス。力を貸してくれ。俺達の、大切な人を救うために」

 

「僕は、貴女のことを、愛しています。今でも変わらず、愛しています」

 

例え愛する者が人と違っていたとしても、彼女に向かい世界が悪意の牙を剥くとしても。例え世界が拒んでも守り抜くと言うその覚悟。もう一度始める、ここから。その決意に偽りはなく。白亜の「後継者」となった優馬を待つ未来とは。

 

前巻とはまた違った、けれど重厚な面白さと熱さが確実に上がっていく今巻。

 

ここまで来たのなら、是非三巻も読みたい次第である。

 

バレットコード:ファイアウォール2 (電撃文庫) | 斉藤 すず, 緜 |本 | 通販 | Amazon