前巻の感想はこちら↓
読書感想:王様のプロポーズ2 鴇羽の悪魔 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で当座の「敵」となる喰良が現れ本格的に始まったこの作品であるが、画面の前の読者の皆様は今巻の表紙を務める瑠璃を見て、こう思われたことは無いであろうか。無色も彩禍の事も大好きな彼女は、而してヒロインとなれるのか、と。知っての通り無色と瑠璃は実の兄妹であり義理、とかではない。果たして、近親何とやらになるのに大丈夫なのかと。
しかしそんな事は魔術の前では些細な問題であるらしい、というのが分かるのが今巻であり。同時に、無色と瑠璃の過去、彼等の事情の一端に触れていく巻なのである。
前巻、「神話級滅亡因子」であるウロボロスを喰良に奪われた事で、学園同士の会議が始まる中で下手人ともいえる「楼閣」の責任者へ、「方舟」の長である不夜城家当主、青緒が嫌味と挑発を投げる一幕が有ったりしながらも、情報は共有される。そんな中、突如瑠璃の元に不夜城家の本家から婚姻の知らせが舞い込み。抗議に行ったまま連絡が取れなくなった彼女から、婚姻を受け入れると言うビデオレターが届く。
「―――彩禍さんに一言もないなんてあり得ません」
だが、それは無色にとっては違和感満載のものであった。何故ならあれだけ彩禍の事が好きな彼女が、一言もその愛を盛り込んでいなかったから。どう考えても何かおかしい事態が起きているのは明白、しかし海中を往く要塞であり、唯一の女子校である「方舟」に無色は入れず。打開策として、特別講師として。技術部の魔女でありシルベルの生みの親、ヒルデの手も借り彩禍の姿で乗り込んでいく事となる。
青緒や方舟の管理者の面々と丁々発止のやり取りをしながらも何とか瑠璃を見つけ、本当は婚姻なんてしたくないという思いを話す彼女を救うため、一世代程度なら魔術で遺伝子的問題は何とかできると言う事実の元、無色が名乗りを上げる。
「どうか俺と瑠璃を結婚させてください!」
「わたしと瑠璃は相思相愛さ。そうだろう?」
だが、無色が挑んでも、次に彩禍として挑んでも。結局瑠璃の自爆でどうしようもならず。焦り打開策を考える彼等の前、「婚礼の儀」は始まり瑠璃が連れ去られてしまう。
「―――愚問だ」
勿論、救うために是非もなし。正面突破を選び乗り込んだ本家、だがそこで明らかとなるのは「婚礼の儀」の真実。それは二百年前、「神話級滅亡因子」、リヴァイアサンからの呪いを受けた彼女が、生きながらえる為の儀式。
それは瑠璃の命をも蝕んでいる。だが、果たして折よくと言うべきなのか。「方舟」へと迫るのは、喰良によって蘇ったリヴァイアサン。今、絶好の機会が目の前にある。
「―――瑠璃は、お兄ちゃんが、絶対助けるから」
その救うための力、それは彩禍の力に非ず。それは無色の力。強き思いにより発現する、どんな魔術をも打ち破る無限の可能性の剣。
「―――魔女様と兄様は、やっぱり最高だってことです」
そして彩禍が道を作り、無色が手を引いたのならば。2人を敬愛する瑠璃が、仕損じる訳も道理もどこにもない。
「まさか、そのままなの?」
だが、その先に一つの事実が明らかとなる。それは、無色の過去に纏わるもの。彼自身の中、何かが封印されているらしいと言う事。
「―――ただのキスじゃなくて、大好きのキスよ」
それはまだ一端が明らかとなったばかり。だが明らかとなった事もある。瑠璃もまた真実を知る事で果たして何が起きるのか。
シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。