読書感想:王様のプロポーズ5 真赭の賢者

 

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読書感想:王様のプロポーズ4 黄金の神子 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、無色と彩禍の、お互いに影響を与え合う恋、瑠璃から無色に向ける、重い愛、アンヴィエットとサラの間の夫婦愛。この作品ではこれまで様々な形での愛、恋の形が見られてきたわけであるが。ここで一つ、メイン登場人物として紹介されている人物の中で、特に掘り下げが来ていない人物はお分かりであろうか。そう、今巻の表紙を務めるエルルカである。医療に携わる者であり、彩禍からも信用を得ている彼女。彼女の掘り下げをしていくのが今巻だ。

 

 

そして、彩禍と一番深い付き合いであったらしい彼女。その付き合いを解き明かす中で、色々なものが見えてくるのが今巻なのである。

 

 

「何か今日、予定があったような気がするが・・・・・・なんだったかな?」

 

 

いつものように彩禍の姿で滅亡因子討伐に出る無色。彼の心の中、ふと掠めるのは何かを忘れているのではないか、という感覚。その感覚は現実のものとなる。魔術師にとって一番大事な適性試験。彼のレベルであれば突破は容易であったが、結果的にドタキャンしてしまった事で落第となり。無論、彩禍の事情を明かすわけにもいかぬのでどうしたものか、となる中。補習授業を受ける、という抜け道に辿り着き、彩禍、アンヴィエット、そしてエルルカのサインを貰って、補習授業へ向かう事となる。

 

舞台となるのは、丹礼島と呼ばれる様々な滅亡因子が集う島。集められたのは、各学園からそれぞれの事情で集められた者達。何故かその場にいた、ちょっとした知り合いである浅葱達と交流しつつ。庭園では不安と嫉妬に駆られる瑠璃がいる、という事実を知らぬ中、補習は何とか進んでいく。

 

しかし、そこに面倒事はやってくる。島に潜んでいたのは、神話級滅亡因子「キューピッド」。周囲の愛を暴走させるその因子により、浅葱を始めとする補習参加者たちが無色を狙い暴走し。更には、エルルカを狙いやってきた狼系の者達、エルルカの元嫁であるイセセリが場をかき乱さんとする中、キューピッドの権能がより混沌へと落とし込んでいく。

 

「命より大切なものだからって」

 

 

存在変換は使えない、目の前にいるのは皆を救うためキューピッドを取り込み暴走するエルルカ。彼女を救うため、事情を聴いたうえでなおイセセリに協力を願い。無色に預けられていた彼女の本心を垣間見。恨みを解いたイセセリもまた手を貸し。全員の力を合わせる形、ではあるが無色の力で事態を収めることに成功する。

 

 

だが、彼の目の前で事態は急速に動き出す。滅亡因子よりも強いであろう、世界が滅んだ元凶がいるという事。そして時間はもう、あまりない、という事。突然示された制限時間。その時間が来るまでに、無色はプロポーズできるくらいの力を得られるのか。

 

シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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