読書感想:冴えない僕が君の部屋でシている事をクラスメイトは誰も知らない3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:冴えない僕が君の部屋でシている事をクラスメイトは誰も知らない2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、佑希と柚実という性行為から繋がった絆が本物の愛へと変わろうとしているカップルに、麻里花という後から来たヒロインが絡んでいこうとしている、という構図の今作品であるが。今巻では一つの結末、という事で佑希が二人からの恋を向けられる中で何方を選ぶのかが語られるのである。

 

 

そも、バッサリ決めてしまえばいい、と言いたい読者様もおられるだろう。優柔不断と叱りたい読者様もおられるかもしれない。しかしどうか勘弁してあげて欲しい。前巻でも語ったが、彼等は本当に等身大。カッコいい主人公であったら悩みながらも、きちんと答えを出せるかもしれない。けれど彼は未だ未熟、等身大に肉欲と情欲に振り回される子供である。だけどそれでも、選ばなければという思いはあるのだ。

 

「もちろん二人とも好きだから、好きとか嫌いとって単純な話じゃないんだ」

 

菜希にそれとなく問われて告白する胸の内。好きなのは確か、だがその感情は好き、以上の名前が無い。だからこそ表現方法が分からない。それでも答えを出さなければ、と決意し。佑希は答えを出す為にも、二人と絆を深めていく。

 

柚実と図書館デートし、不意に密着したり。麻里花とオープンキャンパスに出かけて、公共の場でいちゃいちゃを見せつけたり。好きだからこそその時間は楽しい。相手と一緒に居ると嬉しい。だけど同時に、心の中に高まっていくのは後ろめたさ。それは答えを出していないが故に。

 

「それは決定権を持った優位にいる人間のエゴだよ」

 

伶奈に誘われた沖縄旅行、その資金稼ぎの為に柚実のバイト先で麻里花も誘ってバイトする事となり。ぎこちなくも仕事をしスタッフ達とも仲良くなる中、恋敵である達也から突き付けられたのは佑希の気持ちがエゴであるという事。大切にしたい、しかしそれは天秤にかけている事に他ならぬ。このまま選ばなければ消耗の先の破滅、だが選んだとて、それは取捨選択。どの道を選んでも地獄かもしれない、ならば何を選ぶのか。

 

答えも出せぬまま始まる沖縄旅行。麻里花が繁華街で迷子になってナンパされていたところを助け、自然と彼女とも一線を越えたり。定番イベントである海水浴に皆で出かけたり。楽しい時間を過ごす中、伶奈の気づかいにより三人でペンションに放置され。いよいよ佑希は結論を出す事となる。

 

「僕は三人で積み重ねた先にある、行く末を知りたい」

 

新たな命の誕生を目撃し、振り返る今まで。佑希と柚実、その関係の中心には麻里花の姿があった。彼女がいたから、為せたものもあった。だから、どちらかを選ぶのではなく。まだ、三人で。例えこの先が破滅でも行ける所まで。呪いのアイテムと共に、彼等は答えを共有する。運命をお互いに相手に委ねる、甘美な共依存という答えを。

 

狂ってる、おかしい。そう批判したくなるかもしれない。だがそれでも、未熟なりに出したその答えを。どうか見守ってあげて欲しい。

 

最期まで画面の前の読者の皆様も是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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