読書感想:不敗の名将バルカの完璧国家攻略チャート1 惚れた女のためならばどんな弱小国でも勝利させてやる

 

 さて、まぁまぁ昔のアニメであるが「新機動戦記ガンダムW」に登場する「トロワ・バートン」というキャラは起こり得る全ての状況を想定し作戦行動を行っていた。「コードギアス反逆のルルーシュ」における主人公、ルルーシュも様々な事態を想定し作戦を組んでいた。そう、例え完璧な作戦を組んだとしても、実際の状況というのは流動的である為、完璧というのは本当は無いのかもしれない。ならば、どんな場合にも対応できるように幾つもの策を並行し用意しておくのが重要であるのかもしれない。

 

 

「どうして俺はこんなにモテないんだあああ!?」

 

そういった参謀、軍師キャラの末席に今、名を連ねる者が一人。その名はバルカ(表紙中央)。強大な帝国に侵攻を受け、存亡の危機にさらされる異世界の王国、カルケド。そこへすい星のごとく現れた彼は、女の子にモテたいから戦うと言う軽薄な理由で戦う、いつもは三枚目のチャラ男。

 

「彼はどんなことだって、必ずやり遂げる男だもの」

 

 だが、彼は幼馴染でもある王女、シビーユ(表紙右)から絶大な信頼を寄せられ、彼女のお願いという名の無理難題を日々叶えていた。何故そんな事が出来るのか。それは彼が、国を影から守り続けていた軍師からその全てを受け継いだ、若き天才将軍だったからである。

 

「万一の状況も予測して、既に手は打ってある」

 

その戦略は正に未来を見通すのように自由自在。全てを予想しその為に無駄になろうとも幾つもの布石を先手を取って打ち準備しているからこそ。どんな状況にも対応できる万能性、それが彼の強みなのである。

 

その策略は深謀遠慮の限りを尽くす。物見遊山が如き潜入が人心掌握の一歩であり。部下のバカンスが実は残存兵狩りの備えになるものだったり。ある時は敵の前線基地である砦を攻略したり。またある時は、聖地の復興から貴族の反乱制圧まで。副官であるウルリカ(表紙左)に呆れられつつも尊敬され、シビーユお付きの秘書官であるエリッサには温かく見守られ。行く先々で惚れてフラれてを繰り返しながら、時に嘆きながらもバルカは次々と戦果を重ねていく。

 

何度フラれても、へにゃりと笑って立ち上がる。彼の心の根底とは何なのか。その心にいるのは只一人。あの日交わした彼女との約束、確かな思いがあるから彼は前を向ている。多くの女性に現を抜かしているように見えて、彼の心は一途に彼女だけを想っている。だからこそ王都が占拠された時であっても。臆することなく単身、秘密の通路を使って彼女を助けるために乗り込んでいく。

 

「チャンスが永遠になくなったわけじゃないんだし」

 

だけど、全てを解決しても。二人は並び立てぬ。この世界では恋だって戦略だから。だけど、まだ可能性は残っている。この国を強国に。それこそが唯一の可能性。

 

王道的な戦記ものの中、こういった世界観だからこその愛があるこの作品。ファンタジー戦記を楽しみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。