読書感想:才女のお世話5 高嶺の花だらけな名門校で、学院一のお嬢様(生活能力皆無)を陰ながらお世話することになりました

 

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読書感想:才女のお世話4 高嶺の花だらけな名門校で、学院一のお嬢様(生活能力皆無)を陰ながらお世話することになりました - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品の主人公とヒロインは伊月と雛子である、というのはこの作品を読まれている読者様であればご存じであろう。しかし見方を変えれば、お互い主人公と言っても過言ではないかもしれない。お互いに成長の要素があるのだから。そんな二人のラブコメは前巻、百合からの後押しによりようやく始まろうとしている訳であるが。その恋が始まった時、そこに待っているのは何であろうか。

 

 

無論、待っているのは変化と新たな始まり。では更に雛子にとって必要なのは何であろうか。それは伊月の今までの道を知る事。今まで知らなかった一面を知る事もまた、重要なのである。

 

「私も経験してみたい」

 

夏休みも短くなり始める中、此花家に舞い込んできた突然の知らせ。それは雛子の苦手な相手である兄、琢磨が帰ってくると言うもの。いつものように避難先を探す中、雛子の提案により伊月が前に住んでいたアパートで庶民の暮らしを経験してみる事となり。サポート役である静音も含め、三人でかつて伊月が住んでいたボロアパートに一時退避する事となる。

 

 見た事もない間取り、想像した事もない小さな学校。味わったことのない、商店街の人達との助け合い。今まで箱入りお嬢様として生きてきた雛子にとっては、何もかもが初めての経験。庶民としての生活を何だかんだと謳歌する中。徘徊が趣味の琢磨が伊月に接触した事で、二人にとっての変化の時が始まる。

 

「今の君じゃあ、雛子の居場所になり得ないよ」

 

気味悪い程の洞察力を持つ琢磨から放たれた言葉、そこに込められた意味とは何なのか。伊月は心揺らし、思考に惑う。

 

「自分のために、考えて」

 

百合から借りた漫画で恋を理解した雛子は、物語の登場人物の行いに自身を重ね、自分が伊月を縛っているのではないか、伊月の人生を歪めてしまったのではないかと思い悩み。伊月を同窓会へと送り出す。

 

そう、足りなかったのは覚悟。庶民と高嶺、二つの世界で生きてきた伊月。今までの世界か、新しい世界か。どちらかを選び、戻らぬくらいの覚悟が必要と琢磨は言いたかったのだ。どっちつかずの自分に答えを出す為、伊月は意を決し同窓会へと向かっていく。

 

「だって、俺は今の生活が楽しいから」

 

やっと見つけた自分の気持ち、自分がいたい場所。その場所にいる為に見つけた新たな夢と目標。

 

その道に立ち塞がるのは、琢磨。成程、彼は味方のようで敵であり、味方であるのかもしれない。だが彼の本質は、己のエゴに酔う怪物だと言うのなら。伊月にとっても雛子にとっても。彼は乗り越えるべき壁、となるのだろう。

 

その超える道すらも、伊月はまだ立てていない。だからこそここから。きっと本当の意味での戦いが始まるのだろう。

 

前巻の萌芽から、本当の意味での新たな章が始まる今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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