前巻感想はこちら↓
読書感想：クールな女神様と一緒に住んだら、甘やかしすぎてポンコツにしてしまった件について２ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で親の世界のとばっちりを受け子供達の関係が振り回される、というラブコメの中でも中々に特殊な状況へと進んでいったこの作品であるが、玲衣の思いは純粋である、晴人に向ける思いに混じり気はない、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。夏帆の思いもまた、純粋であると言える。しかし琴音の思いは少し違う。打算と計算込みであり、親世代からのとばっちりを最大限に利用しようともしている。だがそれでも、そこにある恋は確かなのである。
だからこそ、それぞれの思いは譲れない。離さない、逃がさない。譲るつもりもないのならぶつかり合うしかない。彼の隣に並べるのは一人、だからこそぶつかり合うしかない。そしてそれは雨音も同じ。彼女もまた譲れぬ思いを表し、参戦してくるのが今巻なのである。
「わたしは全然恥ずかしくないし、晴人くんのこと、大好きだもの」
夏帆も対抗心をむき出しにし始め、登校中は四人で、しかし放課後は二人で。そんな中、玲衣の何気ない一言により晴人は雨音の思いを考える。姉のような存在だとばかり思ってきた彼女の思い、それを何も知らなかったという事に気付いていく。
「私なんかいなくても、晴人君には居場所がある」
それは、元々彼等が住んでいたアパートの一室の整理中に明らかとなっていく。今まで押し殺していたその思い、だけど晴人の周りに少女達の輪が形成されていくのを見て。雨音もまた思いを抑えきれなくなり、晴人に不意打ちのキスをかまし思いを告げる。好きだ、という思いを。
知らぬ間に傷つけていた、その事実に心揺れる。だがそれでも、まずは琴音の方の問題をどうにかせねばならない。婚約を盤石のものとするため、クリスマスパーティで婚約を発表しようとする彼女。彼女を止める為には、祖父を説得しなければならない。そうなるなら何が求められるのか。それ即ち、玲衣にとっての試練。今まで避けてきた家の問題に向き合い立ち向かい。乗り越えなければ、その場所は掴めない。
「俺にも欲しいものはあるんです。玲衣さんを・・・・・・俺にください！」
そして玲衣の側に立つのなら、晴人もまた求められる。上に立ち、何を為すのか。玲衣と共に為したい事を、晴人は祖父へと叩きつけ。まずは第一歩として、婚約解消の確約を引き出して見せるのである。
だがそれは、ヒロイン達が横並び一線になるという事。もはや誰にも、本当の意味でのアドバンテージはない。故にここからが全ての本番なのである。
為したい事を見つけ思いが深まる中、ヒロインレースが加速する今巻。シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
