読書感想:本能寺から始める信長との天下統一9

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:本能寺から始める信長との天下統一8 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻でこの時代の世界においては最大の宗教勢力であるキリスト教と激突する事となり、本格的に世界大戦へと飛び込んでいった我らが真琴と信長様達であるが、画面の前の読者の皆様は真琴に何かが足りないのではないか、と思われないであろうか。では何が足りないのであろうか。それは「覚悟」と「挫折」と言えるのではないだろうか。

 

 

「挫折」、それはまだ彼は経験していない。何だかんだと今まで勝ち進んでいたからこそ、まだ折れてはいない。だが一度折れた方がより強く打ち上がる、という事もあり何れ一度は折れなくてはならないと言える。では「覚悟」とは何か。それは「大将」という覚悟。真琴が知っているのは「武将」としての覚悟。言うなればそれは替えの効く立場としての覚悟。使われる者ではなく、使う者として。必ず、何を犠牲にしても生き延びる。そういった覚悟を彼が知っていくのが今巻なのである。

 

「真琴様、駄目、また鬼になりかけている」

 

インカ帝国に侵略し、暴虐の限りを尽くすイスパニア帝国。修羅を相手が貫き通してくるのなら、自らもまた修羅として。鬼の如く激烈にいこうとする真琴をお初が引き留め。かろうじて魔に飲み込まれずに済んだ真琴は、新兵器を携えイスパニア抵抗を押し返し。ファナを旗頭とし南アメリカ大陸へと乗り込み。現地の者達を纏めながらも、新たな戦いを始めようとしていた。

 

「武将にはなれたのだ、大将になれ、真琴。時に非情な覚悟を持つ大将になれ」

 

 だが、始まって早々、想定外の事態に躓きが起き、真琴を守るために女子や他武将の家臣が命を賭け、散っていく。何故そんな事態となったのか。それは合流した信長様も言う通り、覚悟が足りなかったから。自分の本分を戦いの中で見失いながら、突き進む事を止められず。その果てに足りぬ覚悟が判断を鈍らせてしまったからである。

 

「そうだな、俺には俺にしか考えつかない未来の知識があるんだよな」

 

信長の指示により一度、領地で養生する事となり。ほぼ三年ぶりの領地で待っていたのは懐かしき者達、そして自分の知識が生み出した新たな兵器たち。事ここに至り、真琴はようやく思い出す。自分にしか出来ぬ事、自分の本分を。戦場の最前線ではない、自分だけの戦いの舞台を。

 

思い出したのならばあとは励むのみ。世界に覇を唱えんとするなら二番ではいけない、一番のみ。新たな勝てる船で再び大陸へと乗り込み、ここからが第二ラウンド、本当の戦いなのである。

 

挫折からの再起、成長が描かれる今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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