読書感想:ウォーゲーム・ハイスクール

 

 さて、TCGからボードゲーム、ソシャゲにそれこそTVゲームと言った具合にこの世界には様々な種類のゲームが存在している訳であるが、画面の前の読者の皆様は何かのゲームにガチでのめり込んだ事はあられるであろうか。それとも、エンジョイ勢として楽しめればいいやというスタンスでプレイされているものはあるであろうか。ゲームに対するスタンスは人それぞれ、それもまた事実。だが確かな一つの事実、それはゲームというのは「面白い」という事なのである。

 

 

フルダイブ技術が導入された2020年代中期、「VReスポーツ主要十か国対抗戦」という世界中を巻き込んだ仮想空間内スポーツの祭典で最下位に沈んだ日本で持ち上がった一つの計画。「進化の箱計画」と呼ばれたそれは黄金成長期の子供達に義務教育の代わりにゲームに関する英才教育を受けさせる、というもの。その計画の中、一人のゲーマーが生まれた。その名は「IS」。大人もAIも慄かせ、表舞台に登場してすぐにあらゆる大会を無敗で勝ち抜いた彼。だが彼は世界の頂点に立ったその日、忽然と姿を消した。

 

「センパイは―――負けるのがこわいんですよね?」

 

 その理由とはずばり、交通事故でゲームに関する記憶だけを失ってしまったから。数年後、一般人のエンジョイ勢して生きる「IS」の正体、白斗のもとにやってきたのは、ネットのアイドルである少女、結(表紙)。完全実力主義のゲーマー養成校、「ウォーゲーム・ハイスクール」への招待状を持ってきた彼女に断るも、挑発を受け。怒りの琴線を刺激された彼は、結との勝負として彼女が指定した「初心者お断り」と呼ばれる格闘ゲームにダイヴする。

 

結は目撃する。エンジョイ勢、などどいう生温い皮の下に隠されていた獰猛なゲーマーとしての本性を。戦いの中、錆を落とし復活していく怪物の姿を。その胸を躍らせるのは、あの日感じたわくわく。それは白斗の胸の中にも。再びゲームへの情熱を取り戻した彼は「ウォーゲーム・ハイスクール」の「特別招待生試験」の門を叩き。多くの好敵手達が鎬を削る中へと飛び込んでいく。

 

進んでも待つのは、完全実力主義に裏打ちされた戦争のような日々。だけどもう退かない、逃げない。確かに経験は失われた、体は覚えていない。だが再びスポンジが水を吸い込むように、凄まじい速度で全てを吸収していく。事故で身に着けた、光速の先すらも捕らえ、光だって遅すぎる世界を捕らえる力を武器に、戦い抜く。

 

行われるサバイバル、チームを組むのは同じゲーマーたち。目の前に立つのは、自分よりも圧倒的に格上な強敵達。

 

「たったいま、ここが時代の〈転換点〉だって考えると、ワクワクしないかい?」

 

―――それがどうした、俺を見ろ。「IS」じゃない、俺というゲーマーを見ろ。そう言わんばかりに吼え、舞う。それは自己顕示欲、そして楽しむと言う心。究極の熱を持ったその思いは周囲に伝播し、まるで火種のように周囲を発火させ。ゲーマーとして身を置くべき業火の中へと飲み込み、見る者すべてを魅了していくのだ。

 

正にこの作品、新時代の黎明を告げるに相応しいと太鼓判を押したい。この熱さはここにしかない、この熱さを見逃さないで欲しい。声を張り上げて私はそう言いたい。

 

心に熱を灯したい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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