読書感想:ゲームで不遇職を極めた少年、異世界では魔術師適性MAXだと歓迎されて英雄生活を自由に満喫する/スペルキャスターLv100

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。ゲーム、というのは色々な場合があるがやり込み要素、という極めていけばキリがない要素が用意されているゲームもあるというのはご存じであろう。そのようなやり込み要素を、皆様は何か極められた事はあるであろうか。このゲームだけは、誰にも負けない程にやりつくしたし、全てを極めたという自負があるゲームはあられるであろうか。

 

 

覇権MMORPG「アローディア」。百万人を超えるアクティブユーザーを抱えるこのゲームには一つ、不遇の職業が存在していた。その名は「魔術師」。攻撃方法である魔法を、呪文を唱えなければ使えないと言う仕様ゆえに、センスを疑われ不遇。しかし数奇な者はいる者である。千人にも満たない「魔術師」プレイヤーのトップである少年、九郎(表紙左)。彼は十四歳の身でありながらも、類まれなる努力により「魔術師」を極め。その最強の頂に立つべく、最後のクエストへ。魔法攻撃しか効かぬ巨大な狼との死闘の果て、極限の集中の果てに彼はソロでボス討伐に成功する。

 

「俺、究極魔法を創ってみせるよ」

 

―――その瞬間、彼は謎の光に包まれ気が付けばその意識は「アローディア」としか思えぬ世界にあった。彼はゲームの中に転移したのか? 否。混乱する彼の目の前に現れた乃は、ゲーム中のチュートリアルキャラクターである女神、メルティア。彼女が語る所によれば、実は「アローディア」というゲームは、類まれなる魔力を持つ地球に目を付けた彼女が作成を依頼したものであり。数百年後に復活する魔王を討伐する為の究極魔法を創り出せる者を探すためだったのだ。白羽の矢を立てられた九郎は、本物の魔法を撃てることに魅了され。是非もなく、メルティアに協力する事を決める。

 

「何もわかってくれてなかった!?」

 

お世話役として、若き神官であるセイラ(表紙右)がつき。何故か九郎をからかうのが好きな彼女とボケとツッコミの漫才を繰り広げたり、メルティアに優しく見守られながら。彼は、実際の感触としてリアルに広がるこの異世界を満喫していく。

 

招かれた英雄として、しかし驕る事は決してせず。それは彼がまだ純真な少年であり、そしてやはりゲーマーであるからだろう。まずはこの世界で何処まで出来るかを確かめつつ、いきなり一足飛びするのではなく少しずつ足場を固めながら。NPCではないこの世界の本物の人達と交流を深めたり、探索中に謎の女騎士と仲良くなったりしながら。この世界を満喫していく。

 

だが、やはり予想外は付き物。ゲームの中にはいなかった本物の魔族。吸血鬼の女王であるアルシメイアのかけた呪いがセイラを苦しめ、その命を奪おうとする。

 

「―――スタートボタンを押さないゲーマーなんて、ゲーマーじゃないよね」

 

「この気持ちこそがリアルなんだよ」

 

敵は正しく未知の敵、下手したら自分よりも強いし死んだらそれで終わり。それでも、助けたい人がいる。自分は英雄なんかじゃない、只のゲーマーだ。・・・ならばスタートもせず諦めるのか? そんな訳はないだろう。救えるのならば諦めぬ。只の少年から一皮むけて英雄に。一歩踏み出し九郎は、アルシメイアの居城へカチコミをかける。

 

巻き起こる、交わらぬ考え同士の命の奪い合い。けれどそれもまた、愉しい。初めての敵に九郎は心をときめかせ、全力で戦う。その勝敗を分けるのは何か。それこそは極めた者としての力。全てを解き明かしその手に身に着けたからの奥の手が、戦いを制する力となるのである。

 

無双も可愛いヒロインも、心踊るバトルも全部ある。まさにてんこ盛りな面白さのあるこの作品。王道的な面白さを楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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