読書感想:僕は、騎士学院のモニカ。

 

 さて、画面の前の読者の皆様は「一つの身体に二つの心」と聞いてどんなキャラを連想されるであろうか。私としては、某国民的TCGアニメの初代主人公を推したい所であるが。と、まぁそんな前置きから分かっていただけたかと思うが、この作品の主人公にしてヒロイン、モニカ(表紙)もそういった存在なのである。

 

 

 

とある異世界唯一の国家、「シンフォニーアイランド」。「音」と共に発展してきたこの土地の秩序を守るのは、「騎士」と「神奏術士」と呼ばれる存在達。彼等が戦うのは、何処から来るかも分からぬ謎の存在、「ディソナンス」と呼ばれる存在達。本編開始一年前、幾多の「ディソナンス」を食らった「ディザストロ」と呼ばれる存在により辺境で引き起こされた大災害。それを解決したのは、アウトローでありながらも唯一騎士として認められた男、ダレン。

 

「死ぬのが嫌なら、安心してください。あなたをこんなところで終わらせはしない」

 

 だが、ダレンは正確にはディザストロと相討ちになっていた。瀕死の彼は本来のモニカの、葬送曲のような曲に送られ死ぬはずだった。だが気付けば、何故かダレンはモニカの身体で蘇っており。彼女の望みであった騎士、となる為。教育機関であるトーンハウス学院へ、編入試験を突破し史上初の女性騎士候補生として入学を果たしたのである。

 

「僕はモニカ=グランテッド。いずれ最強の騎士になる人間だよ」

 

入学して早々、騎士学科のトップクラスの候補生、アルギュロスと神奏学科の実力者、ヘリオローズを相手に剣術と神奏術を合わせた独自の剣技を見せつけ、あっという間に彼等を下し。かと思えば、独特のマイペースさで彼等の事を振り回し。気が付けばヘリオローズの友人であるフィーネも加え。仲良し四人組として、共に過ごす時間が増えていく。

 

だがその日々に不穏な影が差していく。学園に出現した人類の天敵、何者かに操られるような様子を見せる敵。その原因を探る為、アルギュロス達と共に駆け抜けていく中。身近にいた黒幕がその思惑を表し、突然に悲しき激突は巻き起こる。

 

「正しい選択なんて、誰にもわからないさ」

 

「やろう、君と僕で」

 

 黒幕により明かされるのは、「モニカ」の本当の願い。精神世界で明かされたのは、モニカが抱えていたダレンへの思い。だが何処まで言っても、人は自分以外にはなれない。だけど今、やらなければいけない事がある。騎士として叶えたい願いがある。「モニカ」からの依頼を受け、ダレンは再びモニカとして立ち上がる。モニカの友である黒幕を救うために。

 

アルギュロスの援護と叫びを受け、再び目覚めるのは限界を超えた力。「ダレン」としての心に刻まれた、極限の極致の剣。その剣で解決を呼び寄せ、今また始めていくのである。「モニカ」としての道を。

 

音楽的な要素に彩られた、優美で独創的な世界観の中、魂を震わすようなファンタジーとバトルが繰り広げられるこの作品。もし、かの大賞作品が生まれていなかったら。この作品が大賞となっていたかもしれない、そんな思いを抱ける面白さがある物語である。

 

独創的な世界観のファンタジーが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

僕は、騎士学院のモニカ。 (ファンタジア文庫) | 陸 そうと, おやずり |本 | 通販 | Amazon