読書感想:チアエルフがあなたの恋を応援します!

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 さて、チア、と聞けば画面の前の読者の皆様は何を連想されるであろうか。チア部で只一人頑張る男の子のお話であろうか。それとも、きららで連載されていたチア部の女子五人のお話であろうか。その答えは千差万別ある筈なので敢えて正解は求めぬとして、チアというものは花のあるものである。画面の前の読者の皆様も甲子園の中継生放送で、応援のために舞い踊るチア部の少女達を見た事もあられるのではないだろうか。と、こんな前置きから察していただけたと思うが、この作品においては「チア」という要素が関係してくる。が、しかし。そのチアは文字通りのチア、という意味ではないと言う事だけは予めお知らせしておきたい。

 

 

「俺って最近、その、度々正気を失ったりするんだよ・・・・・・」

 

周囲から慕われる、「応援部」という部活の部長を務める少女、楓(表紙右)。彼女に恋する級友である少年、香一。しかし、彼はうじうじとしたタイプであり、目が合えば思考が固まり、近くによれば金縛り、遠ざかれば声もかけられぬという、半ば恋を諦めつつある停滞した少年であった。

 

 そんな彼は、楓が落とした栞を拾った事で一人の少女と出会う。彼女の名はダリア(表紙左)。異世界から来たエルフの少女であり、不本意ながらも彼の恋を叶えなければいけなくなった存在である。

 

恋の手助けとなるのは魔法、その為に必要なのは何故か香一とダリアのキス。若干嫌がりながらも、何とか受け入れて飲み込み。香一はダリアの手を借りる形で、楓の攻略へと挑んでいく。

 

 楓を手伝うために、応援部へと入部し共に周りから頼まれる雑用に励んだり。ダリアの言葉を借りて勇気を出して、楓をお出かけにお誘いしたり。不器用ながらも近づいていく距離に、香一の心は舞い上がる。・・・しかし、物語はここで急展開を迎えてしまう。只のラブコメかと思われていたこの作品に隠されていた、裏の味が明らかとなっていく。

 

楓に隠されていた出生の秘密、そしてダリアが隠していたこの世界に来た理由。いっそ突き放すかのように楓は別れを告げ、香一の記憶の中から、彼女の面影が消えていく。

 

「そんなの俺にはどうだっていいんだよ!」

 

 そんな結果は許せない。例え自分の行いが今まで彼女を傷つけているだけだとしても、今まで本当に、自分の言葉で語った事が無かったとしても。今こそ、その時。本当に、自分だけの言葉で想いを伝えるべき時。香一は必死に手を伸ばす。今までの諦めていた自分を飛び越え、真っ直ぐに楓に伝えたいと手を伸ばす。その手は楓に届くのか。それは是非、画面の前の読者の皆様の目で見届けてみてほしい。

 

ブコメの中に成長の輝きがあるこの作品。

 

ちょっと変わった青春ラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。