読書感想:女怪人さんは通い妻

 

 さて、18歳以下お断りのコンテンツの中には、例えばクリーチャーであったり、人形のような無機物であったり、言わば人外の相手との官能描写を描くものが存在するわけであり、それは一定の需要を以て受け入れられている訳であるが、画面の前の読者の皆様は人外の相手、というのはどこまで許容できるであろうか。どこまで人間の形を取っていれば欲情できるであろうか。

 

 

欲情できぬと言う読者様は、それはそれでいい筈だ。クリーチャー娘の良さを知りたいと言う読者様は、某青年誌で連載されているクリ娘の作品を読んでいただくとして。この作品の作者であられる折口良乃先生はかつて「モンスター娘のお医者さん」という人気作品を手掛けられていた訳であるが、もう表紙を見ていただければお分かりであろう。つまりそういう事なのである。

 

異界より来たりし悪の怪人たちの組織、「アステロゾーア」。だが日本を蹂躙するはずのその組織は、玩具会社である「株式会社リクトー」が「社長の道楽」として開発された最先端の技術を用いた兵器を用いたヒーロー、「ヒートフレア」により打ち砕かれ。首領や一部怪人を取り逃すものの、大多数の怪人を戦わずして降伏させる事に成功していた。

 

「たくさん食べて、ステキな同化をしましょうね♪」

 

が、しかし。この降伏した怪人たちが問題であった。強大な力を持つ怪人たちを、そこにいるからと殺す事も出来ず、しかし社会にそのまま放り出す事も出来ず。結果として「怪人対策部」という部署で、「擬態フィルム」という技術を用いて怪人たちを社会に迎合させるという政策を取っていた。その怪人対策部で働く青年、修佑。日々平身低頭し薄給でこき使われる彼。そんな彼をお隣さんとしてお世話する女怪人、ナディブラ(表紙)。かつての幹部である彼女に愛を向けられ、だがそれを修佑は受け入れるわけにはいかなかった。

 

それは何故か。何故ならばナディブラは海洋生物の特徴を持つ怪人であり。彼女の言う「同化」とは、言ってしまえばアンコウの生殖活動のようなもの。即ち自分という存在の喪失に他ならないのだ。

 

そんな彼の思いもつゆ知らず、ナディブラは重い愛を向けてくる。通い妻のように手料理を作って待っていたり(※無許可で不法侵入)、お弁当を作ったり、ある時は彼を苦しめる上司にオシオキしてみたり。溺れさせるような愛を向けられ必死に抵抗し。修佑は日々、業務に励んでいく。

 

妖狐の怪人であるミズクに揶揄われたり、ナディブラを慕う下っ端怪人、シースネークゾーアに命を狙われたり。日々怪人たちと出会い、胃を痛めながらも業務に励む彼。そんなある日、ひょんな事から彼はナディブラとぶつかり合い。ナディブラは出奔し、行方不明となる。

 

このままではヒートフレアに狩られる、それは防がなくてはならぬ。では何故そうなったのか。それはナディブラがある事を知ったから。

 

「対等な関係なら、当たり前のことです」

 

それは修佑は甘やかされるだけの同化対象ではなく、一個の対等な生命体であるという事。一方的に助けるのではなく、お互いに助け合う。それが本当に分かり合うという事なのだ。

 

ガチめな人外とラブコメする、まさしく異形なラブコメである今作品。異形がストライクな皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

 

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