読書感想:女怪人さんは通い妻2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:女怪人さんは通い妻 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で怪人組織、「アステロゾーア」の幹部であったナディブラと修佑のラブコメは始まった訳であるが、ヒートフレアことは、ヒーローとしては怪人の殲滅を目指す思想から動かない。逆に主人公である修佑は、怪人との共存を目指していく立場である。しかし共存と言っても、形はそれぞれある。例えばナディブラが目指していた修佑との同化も、一種の共存である。そして今巻は一つの共存、奇しくもナディブラが目指した形の解答が描かれるのである。

 

 

 

「ばっかお前、ブラック会社で生き残るには情報が必須なんだよ」

 

実態を持たぬ電子生命体である幹部、アルイアの捜索が進められる中、隣席の同僚、伊丹より持ち込まれたのはこの「怪人対策部」という、どう考えてもクソな部署に新人が来ると言うもの。その噂の通り、やってきたのは新卒社員、アイ。指導役として修佑に白羽の矢が立てられるも、IT系を中心に優秀さを見せ。彼女はあっという間に修佑の右腕的な存在となっていく。

 

「では、お疲れ様でした、先輩」

 

 が、しかし。退勤時間を誤魔化し戻った会社で修佑は驚愕の光景を目にする。それは怪人姿のアイ。彼女こそがアルイア(表紙)。危うく殺されかけるも、ミズクの分体に助けられ。一先ず話を聞く事となる。

 

明かされた事情、それは本物のアイのスマホに電子生命体としてのアルイアが入り込み、そのまま仲良くなったと言う事。そして本物のアイは事故に遭い、彼女を生かし精神を取り戻させるために生体電気を用い、アルイアがその身体を借りていると言う事。

 

記憶消去装置の秘密を知るために活動するアルイアの手助けをする事となり、周囲を騙す為にアルイアは修佑と親密な関係を装おうとし、ナディブラとの衝突と彼女の嫉妬を招いていく。一つになれない、一個の生命体として修佑を意識したからこその感情に振り回される中、懸命に補助する修佑はアルイアの思いを知る事となる。

 

それは、アイに身体を返したらアルイアは消滅するという心づもりであると言う事。電子生命体であるからこそ、それが合理的だと突き詰める彼女を止める言葉は思いつかず。その最中、アルイアを探知するために国民にダウンロードが推奨されたアプリが彼女を追い詰め、最早時間の猶予はなくなっていく。

 

「だから、私は強く望みました」

 

だけどアルイアが選んだように、アイ本人にも選ぶ自由がある。彼女自身の意思で、再び共存が選ばれ。どっちつかずの中途半端な状態ではあるが、再びアルイアは復活し、修佑のある意味担当怪人となる。

 

だがしかし、波乱はすぐそばまで迫っている。イデアは目覚めかけ、そして修佑の周りには三人の幹部が揃った事で。様々な方向から彼が注目されていく中、アルイアによりリクトーの裏の闇が仄めかされる。

 

次巻、山場。果たしてどうなるのか、楽しみにしたい。

 

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