読書感想:変人のサラダボウル4

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:変人のサラダボウル3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この間岐阜にはとあるイベントでキムタクが来訪し、大いに目当ての観光客も集まり報道も多数された事で、その顛末をご存じの読者様も多いであろうが、もしかしたらこの作品の登場人物達も何処かで見ていたとしたら。それぞれどんな反応をしたのであろうか。と、そんな前置きはさておき。前巻の最後、望愛の逮捕といういきなりの事態から、この天地混沌な群像劇は何処へと向かっていくのか。

 

 

「ええまあ、無罪になれるのでしたらそれくらいは」

 

拘留された望愛、当番弁護士として呼ばれたブレンダ。刑事事件は受けないと言う建前の元、最低限の助言だけして別れる筈が、法外な報酬に惹かれ弁護を引き受ける事となり。何とか無罪を勝ち取るために、ブレンダは惣助に声を掛け。罪状であるインサイダー取引の、裏を取る為に彼を走らせる。

 

 これで状況が整っていれば、すんなりとリーガルミステリーものに物語は移行していたであろう。無罪を目指し、準備を整える、その筈がリヴィアや明日美と面会した望愛があっさりと罪を認めてしまった事で状況は一気に混沌となっていく。当初の予定を覆され、けれど納得できるものでもなく。望愛の思いに反し無罪を勝ち取るべく、ブレンダは半ばムキになったように動き出す。

 

どこに量刑を望む為に誘導する武器は転がっているかと言うと、それは意外な所に。中学に入学したサラが偶々見つけた校内新聞、そのコラム。そこからヒントを手に入れ、更にはSNSを駆使し。ブレンダは不敵に証拠を叩きつけていく。

 

「全力で賭ける価値のあるギャンブルだと思っているわ」

 

何故か有罪を望む望愛の思惑も無視して何のその、全ては自分の為に。もはや依頼人である望愛ともやり合う姿勢であってもどこまでも。自分の為に突き進んで。けれどやっぱりオチはつくものである。

 

無論、この巻の柱はそれだけではない。

 

望愛の逮捕により寄生先を失い、炎上を避けるために派手な行動が出来なくなってギャンブルの禁断症状に飢えるリヴィアは、鉄火場に出入りしたかと思えば半グレのボスであるミコトという女性に気に入られ、何故か護衛となって寄生してしまったり。

 

中学に入学して早々、涼子という友人が出来たサラは時に上級生に睨まれてグループを壊滅させたりしつつも、学年旅行という名目で白川郷へ初めての旅行に出かけたり。色々な初めてを積み重ねながら、フリーダムに突き進みあちこちで混沌を発生させていくのだ。

 

より混沌、よりサラダボウル。もはや我々は何を見ているのかも分からない、そんな闇鍋のような面白さが更に異色さを増す今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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