前巻感想はこちら↓
読書感想:変人のサラダボウル2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、まるで水のようにするりと飲みこめる、若干コンパクトなページ数の中にこれでもかと混沌を詰め込んだ今作品であるが、今巻においてはラブコメ色が強くなるらしい。しかし画面の前の読者の皆様も何となくお察しではないだろうか。この作品においてラブコメをやるとしても絶対に簡単にいくわけがないと。その通りなのである。それどころかラブコメという色を加える事で、更に混沌を増していくのが今巻なのである。
前巻で惣助の尽力とお願いにより、若干の非合法を交えながらも日本国籍を獲得したサラ。勉学は日本人の義務である。故にサラは「草薙沙羅」という名前で、六年生が卒業間近の小学校へ通う事となる。
「うむ。とりあえずボーイのフレンドと家臣が三人できたのじゃ」
しかし画面の前の読者の皆様も何となくお察しであろう、小学生にしては聡明すぎる彼女を子供達の環境に放り込めばどうなるか。その理知的な振る舞いと、王族らしい大器の器であっという間に子供達の頂点に立ち、彼女は子供達のトップになってしまう。
では彼女と同じ学校へ通えると言う思いを抱いていた友人である中学生、友奈はどうしているのか。彼女もまた、嘆いている余裕はなかった。新たな級友、瑞季が先輩たちにいじめを受けているのを目撃し。彼女に助けを求められた事で、惣助譲りの探偵の技術で証拠をつかむべく奔走する。
「いや、べつにそんなことはないぞ」
助ける中で芽生える、探偵と言う職業への憧れ。その憧れへの道を惣助は肉付けしあっさりと肯定し。友奈の中へ、探偵と言う職業が明確な形を持ち、育ち始める。
「・・・・・・いくらなんでもアピールが下手すぎませんか?」
「やめてなにも聞きたくないわ」
更には惣助に子供が出来たと言う事実を知り、動き出す悪女が二人。何を隠そう、惣助に思いを寄せるブレンダと閨である。この機会を活かし、惣助との心の距離を詰め切ってしまおうと、クリスマスやバレンタインといった様々なイベントが巡り来る中で、女性らしい部分をアピールしようと頑張って。だけど状況が勘違いしたりで空回りして笑いへと変えていく。
「何をやっとるんじゃあやつは・・・・・・」
ではもう一人の主人公、リヴィアは一体何をやっているのか。彼女の方こそ更なる混沌へと足を踏み入れている。カルト宗教で祭り上げられたかと思えば、何故かギャンブラーにジョブチェンジし。更にはバンドとして曲の歌詞に悩んでいた中でかつてのホームレス仲間である鈴木と再会し、小説家である彼に作詞を依頼し。更なる武器を得た事であっという間にバンドとして成り上がっていく。
だが、いい事が続けば悪い事が待っているものである。突如舞い込んだ悪い知らせは一体どんな波乱を巻き起こすのか。
更に混沌とする中、やっぱりするりと読める今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
変人のサラダボウル (3) (ガガガ文庫 ガひ 4-17) | 平坂 読, カントク |本 | 通販 | Amazon