読書感想:地味なおじさん、実は英雄でした。 ~自覚がないまま無双してたら、姪のダンジョン配信で晒されてたようです~

 

 さて、生きていく上で、生活していく上でどうしても避けれぬもの、それはストレス。避けられぬのなら上手に付き合っていくしかない。そういう意味で重要なのは、どうストレスを発散するかという事であろう。例えばカラオケに行って大声を出す。ただ読書に費やして、物語の世界に入り込む。ストレス発散の方法は人それぞれあるであろう。大切なのは誰にも迷惑を掛けずに発散する、という事である。

 

 

「勤務明けのサラリーマンですが・・・・・・何か?」

 

ではこの作品の主人公、長年出版系のブラック企業に勤める擦り切れたおっさん、蛍太(表紙右)のストレス発散方法とは何かというと。バッティングセンターに行って思いっきり球をかっ飛ばすと言う事。だがそのバッティングセンターとは「ダンジョン」、現代に現れた迷宮であり。球は「モンスター」、魔物なのである。

 

急な残業、面倒な上司。急なドタキャン。ストレスが溜まり、逃げる事も出来ず。彼の中でそのストレスは、カウントとして溜まり。

 

「打ち放題だ、ヤッホーーーッ!!」

 

カウントが溜まったその時、それは決壊の合図。向かうはいつものバッティングセンター、常連さんしか入れないボックスにある、ダンジョンへの入り口。 しかし今日は蛍太も知らぬお客さんがいた。それは故あって母親と共に彼の家に同居する姪っ子の光莉(表紙左)。 若者を中心にダンジョン攻略配信が娯楽として受け入れられているこの世界で自身もまた配信者であるも、伸び悩む彼女。 ひょんな事から彼のその活躍を目撃した彼女は、バズの匂いを感じて配信してしまって。 気が付かぬ間に彼は、「新宿バット」と言う名の配信者として世間から注目されていく。

 

無論さっきも言った通り、蛍太の方は全く知らない、というか気付いてもいない。日々ストレスに胃をすり減らし、キレたらバット片手に大暴れするだけ。しかし言うまでもないがそもそも魔物を球にする、なんてこの世界の最強の冒険者にもできない。何故彼に出来るのか。それは、かつてダンジョンがこの世界に発生した時に、その場所に居合わせて。レアな魔物を気付かずに討伐しまくったせいで気が付かぬ間に最強になっていたのだ。

 

そんな彼の庇護下にいるのに、勝手に配信するのは酷い裏切りではないのか。友人にも、蛍太に助けられた冒険者スイレン(表紙左上)にも指摘され。お金の匂いは諦められないも、光莉は大いに悩む事に。

 

「それで幸せなら、かまいません」

 

だが蛍太にとってはどうでもいい事。何故なら光莉もその母親も家族、唯一愛せる残ったもの。だから利用されようが別に、迷惑をかけていないなら気にしない。そしてそんな愛するものに手を出そうとする輩がいるのなら。かっとばし一択、それだけなのだ。

 

くたびれたおっさんの無自覚な活躍が光るこの作品。王道な面白さを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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