読書感想:夢見る男子は現実主義者7

 

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読書感想:夢見る男子は現実主義者6 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻でようやく愛華の心にも恋の色が芽生え、何かが確かに動き出していくわけであるが。果たして、そう簡単にいくであろうか、と画面の前の読者の皆様は思われたことは無いであろうか。一度自覚したのなら止まる事無く駆け出せる、のならば簡単である。だがそう簡単にいくわけではない。それもまた当然の事であろう。何故なら彼女の恋は未だ芽生えたばかりであり。その道はまだ艱難辛苦、前途多難に満ちていると言う他ないのだから。

 

 

 

「初日は誰かと約束してるってこと?」

 

様々な困難を渉の活躍で乗り越え、やっとこさこぎつけた文化祭本番。クラスの出し物もあり中々時間が取れぬ中、愛華は勇気を出して渉に共に文化祭に回らないか、と誘い。色よい返事を取り付けるも、その裏に彼が隠しているものを悟り。詰問の末、文化祭本番、初日に既に用事が入っている事を聞き出す。

 

「―――お兄ちゃんどこですか?」

 

 それもまた仕方のない事かもしれない。何故なら現実主義に立ち返った事により、彼の中には愛華と回ると言う選択肢が最初から存在していなかったのだから。その初日、渉は約束通りに一ノ瀬さんと一緒に、校内を案内する為に笹木さんと合流し。だがそこに友人である貴明の妹であり地雷系ヤンデレブラコンという属性てんこ盛りな有希(表紙)までもが何故か合流してしまう。

 

兄を探し求める彼女に無理矢理に同道され、友人の妹であると言う気安さからどこかぞんざいに取り扱いながら。貴明の影を探し、笹木さんの案内がてら貴明を探す渉達。だが、ひょんな事から渉たちは貴明が告白を受けている現場を目撃する事となる。

 

『―――付き合ってやりゃ良いんだよ』

 

『普通の事だろ、そんなの』

 

『―――こんな幸せな事があるかよ、くそ羨ましい』

 

思わずその告白を保留してしまった貴明は渉に相談を持ち掛け。渉が話すのは、「告白する側」という弱者の側に立ったアドバイス。両想いから始まる恋なんてほぼない、だからこそそこから始めればいいという、自身の恋愛経験も交えたアドバイス

 

 その助言を聞いてしまった愛華の心、容赦なく銃口を突き付けるのはあの日の渉の幻影。自分は正しい判断をしたはずだった、だが彼のその恋愛観は。何度も自分が傷つけてしまったが故のもの。その恋愛観の中に自身が犯したものの残滓を悟り。愛華は変わってしまった彼の中、変わらなかったものを悟ってしまう。

 

もう目を離すことは許されない、ほんわかなんてしてられない。はたして、どこか渇いた彼の恋愛観を目にして。愛華はどう行動するのか。

 

次巻、きっと愛華と渉の本番。その時が楽しみである。

 

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