読書感想:夢見る男子は現実主義者6

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前巻感想はこちら↓

読書感想:夢見る男子は現実主義者5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 何度、やきもきさせられた事であろう。何度、そろそろ素直になりなさいと背中を蹴っ飛ばしてあげたくなっただろう。何度、そろそろ向き合えと言ってしまいたくなっただろう。一度、完膚なきまでに切れてしまったからこそもどかしい、渉と愛華の恋路。今まで現実主義に立ち返った事で渉の良さが周りに知られ、彼の周りには何れも魅力的な女の子達が集まってきた。それでも、彼は変わった思いで愛華の事を見つめ続けてきた。では、愛華はどうであったのだろう。戸惑いの中、芽生えたものは恋の芽であったのか。

 

 

その答えは、今巻の表紙を見てもらえればもう分かるかもしれない。まるで虚を突かれたかのような彼女の表情。その中に、画面の前の読者の皆様も確かに感じられないであろうか、恋の彩を。

 

 そう、ようやくにして恋が芽生える。やっとこさ、本当の意味で二人の心が重なるのが今巻である。

 

問題だらけの文化祭、準備からして無理難題だらけ。関係各所が手詰まりと言う最悪の状況の中、焦燥の中に沈んでいく愛華

 

 しかし、渉が参戦した事で状況は一変する。関係各所との折衝をこなし、タスクを簡略化し更に効率をよくし。まるで魔法のように、彼の八面六臂の活躍が風通しを良くしていく。彼を中心として、あっという間に準備が進んでいく。その最中、愛華が目撃していくことになる、今まで知らなかった彼の顔を。

 

何も知らなかった、真っ直ぐに見ようとすらしていなかった。だけど今、何故か彼の事が良く見える。慣れた手つきでパソコンを操作し、何でもない事のように誰も及ばぬ活躍を見せていく、彼の知らぬ顔をどんどんと知っていく。知らない事を知っていく。

 

その中で湧き上がる、何故ここまでしてくれるのかという思い。何故姉である楓と対立してまで、ここまで働いてくるのかと言う、分からぬ疑問。

 

「―――惚れた弱みだよ」

 

何故そこまで頑張れるのか、理由は分からない。けれど知りたい。臆病を越え一歩、恐る恐る踏み出した愛華へ告げられたのは、優しい言葉。今も尚続く彼の思いの、結実した言葉。

 

「お疲れさま、渉」

 

―――好き、かも。

 

 その言葉に、優しさに、その心に。愛華の気持ちは転がり、恋に落ちた音が響く。聞こえなくても、伝わらなくてもいいと、風に乗せた声が小さく響く。

 

そう、やっとこさ彼等のラブコメは始まったのである。長き時を経て、何処かこんがらがった状態からやっとこさ、本当の形に落ち着いたのである。

 

さて、ここからこのラブコメはどうなるのか。曲者達が集うであろう学園祭、始まったばかりの恋心は追いつけるのか。

 

次巻、刮目して見届けたい。

 

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