読書感想:転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件5

 

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読書感想:転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の最後、隼人を追い残されていたもう一人の幼なじみ、沙紀もまた彼等の元へと転校してきたわけであるが、画面の前の読者の皆様は彼女の参戦が一体どんな事態を招かれると思われるであろうか。 それは春希の更なる後退、と言っても過言ではないのかもしれない。

 

 

それもまた、仕方のない事なのかもしれぬ。春希はまず、幼馴染であり、同時に「親友」である。故に女の子、という意識が最初に来なくても仕方のない事かもしれない。だからこそ隼人と彼女の関係はもどかしいものに他ならぬ。彼がいたからこそ春希は少しずつではあるものの、「擬態」を解く事が出来た。それができるようになったからこそ広がっていく関係があった。だけど一番望んだ関係だけは未だ、変える事が出来ていない。

 

では沙紀はどうであろう。春希にとっても大事な友達であり、隼人にとっても幼馴染である。しかし彼女は「親友の妹」、というフィルターを通してはいるものの、隼人から確かに意識されている相手である。だからこそ、隼人の心を彼女は揺らしている。彼の心の中、彼女の居場所が確かに、少しずつ大きくなっている。

 

 

「隼人ってさ、ボクのこと女と見てないでしょ?」

 

「手を伸ばせば、すぐ届く」

 

 変化を望んでも、隼人の心へ伸ばした手は、春希にとっては遠くへ。だが、都会へと転校してきて、必死に自分を変えたいと沙紀が伸ばした手は、春希よりも近くに。変わりたいと願う心は一方は遠くて、一方は近い。気が付けばどんどんと、差が埋められていく。彼女が持てなかった思いが、彼の心を侵食していく。

 

そんな中、隼人の友人でもある一輝周りにも変化がありつつ。どんどんと思春期特有の人間関係は深まり、もどかしさが降り積もり、どんどんと胃に切り込んでくる中で。

 

「これからどんなノリで接すればいいんだよ・・・・・・」

 

隼人の心は迷子になっていく、どんどんと。とっくに特別へと傾いていた天秤が、今一度隼人に事実を突き付けてくる。建前の関係の名前では何も釣り合わない、彼自身の中に既に生まれていた感情の名前を。

 

簡単に恋愛には転がらないからこそ五里霧中、予測不能の中で更に人間関係が深まっていく今巻。どんどんと余裕をなくしていく春希は、隼人の中に「特別」を刻めるのか。沙紀という強力な恋敵に、ここから打ち勝つことはできるのか。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。