読書感想:転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、隼人と春希、二人のお互いへの思いは今始まったばかりであり、まだもどかしくもすれ違う中で群像劇的な面白さへと飛躍しようとしている、というのは前巻までを読まれた読者様であればもうご存じであろう。では、もし群像劇になるとするのなら、ここに足りぬのは何か。それはもう、皆様もお分かりではないだろうか。隼人と春希の共通の幼馴染であり、唯一月野瀬村に残った幼馴染である沙紀(表紙左)。隼人の自分の知らぬ顔を知っている彼女こそが、群像劇に足りぬ唯一のピース。彼女まで加えて、真の始まりなのである。

 

 

帰省の季節となり、姫子も伴い月野瀬村に帰省する隼人と春希。二人を待っていた沙紀とその弟の心太、そして変わらぬ村の人々の歓待を受け。独特の穏やかな空気が流れる村の雰囲気の中に包み込まれ、独特のコミュニティの温かさにあっという間に馴染んでいく二人。

 

 またあの頃のように、皆で遊ぼう。村の遊び場を、この一瞬しかない時間を満喫せんとするかのように。皆でセミを追いかけたり、川へと沢遊びに繰り出したり、皆でBBQを行ったり。そんな中で迫る隼人の誕生日。沙紀に相談し、一緒に祝おうと秘密裡に動き出す中。春希は沙紀の思いと、彼女へ向けられている隼人の思い、そしてこの村に残してきた「始まり」に触れていく。

 

残されても、置いて行かれても。変わらぬ恋を隼人へ向け、その瞳には変わらぬ恋の思いが揺れている。そんな思いを知ってか知らずか、それでも隼人も彼なりに沙紀を大切に思っている。それははやとが「霧島隼人」になる為に必要だったと思われる時間。自分とはまた違った形で、隼人の中には沙紀の居場所がある。大切にされている。

 

対し、自分はどうなのか。この村で自分ははるきから「二階堂春希」となった。この村で覚えた、「清楚可憐」という仮面の被り方を。その仮面の根底は、相手の望む自分を演じられるのは、間違いなく忌むべき母親の血のせい。

 

「だから、変に気を遣ったり、遠慮とかしたりしないでよ、バカーッ!」

 

 思い悩み、自分一人で沈んでいこうとする春希。だが、そんな彼女へと沙紀は一歩踏み込え手を伸ばす。隼人の事が好きであるように、彼女の事も好きだから。だから遠慮とか気遣いなんて要らない、「友達」なんだからと。

 

そう、変わったのならばまた変わればいいだけ。その一歩を踏み出すのにきっと、これ以上の場所はない。ここからだからこそ、始められるものがあるはずだから。

 

彼女に背を押され春希もまた歩き出し、そして彼等を追い彼女もまた駆けつける。

 

そう、恋敵の参戦となるかもしれぬこの展開。だからこそ、これからも期待したい。

 

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